どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
紹介する本の第一弾は舞城王太郎さんの「熊の場所」です。
舞城王太郎さんは「土か煙か食い物か」で第17回メフィスト賞を受賞し、その後は「阿修羅ガール」で三島由紀夫賞を獲得した、ミステリから純文学への越境作家です。
この作品は群像に掲載された「熊の場所」「バット男」に書き下ろしの「ピコーン!」を加えた三つの短編からなる短編集です。内「ピコーン!」は日本推理作家協会賞候補、表題作「熊の場所」 は三島由紀夫賞候補となり、舞城王太郎さんはこの「熊の場所」から純文学方面へ活動をシフトしたようです。
僕は舞城作品は初めて読んだんですけど、それまでのイメージを一新させるような素晴らしい作品でした。
舞城王太郎さんと言うと覆面作家で、男か女かもわからない。芥川賞候補になった「好き好き大好き超愛してる」は石原元都知事に散々に批判されるなど、僕の中では癖の強い作家なんだろうなー、という非常にもやっとした作家さんだったんですけど、この作品はそんな靄を振り払ってくれました。とにかくすごく面白い作品です。
まず表題作の「熊の場所」ですが、これは田舎の少年の話というある種、純文学の王道とも言える作品です。
熊と戦った経緯を持つ父を持つ主人公の少年は「恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない」と言う父の教訓を胸に生きている。それ以外は特に際立った所のない普通の少年ですが、ある日学校で同じクラスの少年まー君が猫の死体を持ってきているのを偶然見つけてしまう。主人公の少年は怖くなり、一度は逃げてしまうのだが、父の教訓の元まー君に会いに行くことを決意します。その後、紆余曲折あり二人はサッカーを通して仲良くなりますが、まー君は本当に猫を殺したのか、そのことを疑いながら不思議な友情を築き上げていきます。この過程が少年らしいというか、怖いものみたさにお化け屋敷に入るような、そんな危うさをはらみながら軽快な一人称で描かれます。
仲良くなり、まー君の家に泊まるようにもなってきた主人公の少年は、猫を殺したまー君の危うい欲望の一端を垣間見るようになり……とこんな感じで物語は進んでいきます。そしてその後、ある一つの事件が起きここからはミステリよろしく、その事件の真相を追い求めていきます。この事件はネタバレを含むので割愛しますが、ラストがなかなか衝撃です。その前の事件の真相が発覚する場面もかなり猟奇的ですが、最後の一ページには叶わないでしょう。
さて、熊の場所について紹介してきましたが、これを遥かにか超えていくのが「バット男」です。
バット男では、弱者に対する社会的仕打ちに対して徐々に大人になっていく少年の視点で物語が描かれます。これがまたどうしようもないお話で、夫ではない子の出産、行き違う男女、そして破綻が丁寧に描かれます。「熊の場所」のようにストーリーに大きな起伏があるわけではなく、予定調和的に物語は進行しますが、バット男になってはいけないというメッセージが非常に伝わってきます。バット男とは一体なんなのか? それは読んで確かめてみてください。
そして最後の短編「ピコーン!」ですが、こちらは他の純文学でも類を見ない奇妙な作品です。女性、それも不良少女の視点からお話は描かれるのですが、まあすごい。ちょっと書けないくらいものすごい描写が続くところがあります(苦笑)ですが、さすがは推理作家協会賞候補ということでミステリ部分はしっかりしています。主人公の行動力には感服します。
いかがだったでしょうか? 初めての紹介だったので、色々拙い部分があったと思いますが、これを読んでこの作品を読みたくなっていただければ幸いです。
それではまた(≧(エ)≦。)