どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
今週のジャンプは銀魂が熱かったですねw
さて、今日紹介するのは田中慎弥さんの「切れた鎖」です
著者の田中慎弥さんは2005年に「冷たい水の羊」で新潮新人賞を獲得、その後は「蛹」で川端康成賞を最年少で獲得、さらにそれを収録した今作で三島由紀夫賞を受賞、さらに映画化もされた「共喰い」で芥川賞を受賞するなど、純文学の主要な賞の大半を獲得しているという、まさに昨今の純文学作家の中ではエリートとも言うべき存在です。
また田中慎弥さんと言えば、芥川賞受賞時に石原元都知事に向けた挑発ともとれる発言が有名です。あの時の発言の鮮烈さと「共喰い」を読んだときの感動は今でも忘れられません。それほど威力を持った作品でした。
さて、僕は前述の共喰いから田中慎弥さんの作品に入ったのですが、共食いの印象があまりにも強すぎたので、今作は有名な賞こそとっているものの大したことはないだろうと思っていましたが、逆に共喰い以上に記憶に残る作品となりました。
まず、田中慎弥さんの作品の特徴として挙げておきたいのが、親子関係と、もう一つが空想と現実が交わって行く描写です。
田中慎弥さんは芥川賞受賞作でそうだったように親子関係を書くのが非常に秀逸です。共喰いでは父と子、「第三紀層の魚」では祖父と孫、本作収録の「切れた鎖」では祖母と孫の関係が描かれます。
微妙な距離感、会話、暴力と性、その書き方は他の作家では決して真似できない筆力があります。
さらに空想と現実が交わって行くシーンですが、これらは今作でもいくつか見受けられます。この描写は、田中慎弥さんという作家の表現力を全てつぎ込んだ、他の作品では見ることが不可能と言っても過言ではない、田中慎弥さん独特のカラーを生み出しています。
上記二点に関して言えば、今後田中慎弥という作家を超える人物は二十年は出てこないと思います。
今作に収録されている作品は短編が三つ、「不意の償い」、川端康成賞受賞の「蛹」、表題作の「切れた鎖」です。
不意の償いは、子供を身籠った妻と夫の関係を、夫を通して書いた作品で、現実のさりげない描写に空想が紛れ込んでいく過程、そこからもどってくる主人公の様子が丁寧に描かれています。
そして、僕の中で共喰いの印象を全て払いのけた蛹は、カブトムシになろうとする幼虫を、森全体を俯瞰しつつ描写し、少しずつ成長していく姿が田中慎弥さんの筆致で見事に描かれています。
これだけは死ぬまでにぜひ読みたい短編です。
表題作の切れた鎖は祖母と孫の関係を、共喰いに収録されている第三紀層の魚を彷彿とさせる見事さで描いています。
血縁により引き継がれていく人としての欲望、田舎の描写、些細な心情の変化、どれをとっても完璧です。
気になった方は蛹から読んで見てください。その表現力に圧倒されます。
一冊で川端康成賞受賞作も三島由紀夫賞受賞作も読める「切れた鎖」ぜひご一読を!
それではこの辺で(≧(エ)≦。)