どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
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さて、今回紹介するのは松村涼哉さんの「15歳のテロリスト」です。
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15歳の少年・渡辺篤人は新宿駅に爆弾を仕掛けたという犯行予告の動画を投稿する。そしてその直後、それは嘘ではないことが証明される。少年犯罪を追う記者の安藤はかつて篤人とかつて関わったこともあり彼の犯行を追うことになる。かつての少年犯罪と新宿駅爆破テロがつながる中で見えてくる真実とは…

電撃小説大賞で大賞を受賞しデビューした松村涼哉さんのデビュー4作目。メディアワークス文庫では初めての刊行になります。「ただ、それだけでよかったんです」「おはよう、愚か者。おやすみ、ボクの世界」の2作品がとても面白かったので今作も購入。期待をはるかに上回る面白さでした。

まず何より読後に感じるのがページ数からは考えられないほどの密度。少年と犯罪。これを余すことなく描いています。なぜ渡辺篤人という少年が爆破テロを起こしたのか、から始まりラストにかけて明かされる真実。映像が浮かんで心を掴んで離さないかと思ったら、その映像が簡単に読み手を裏切って傷をつける。この作品を読んでいる間は時間が普段の2倍濃密なものに感じました。

物語は主にテロを起こした少年の渡辺篤人と記者の安藤の視点で進みます。篤人という少年を作りあげたある少年の犯罪。そして再び彼を襲う悲劇。そしてテロに至るまでの今。最初はよく見えなかった事件の真相は安藤がわずかな証拠を追うことで輪郭を得ていきます。

渡辺篤人の過去を繋ぐ灰谷ユズルと富田ヒイロ。そして灰谷アズサ。ただの少年・少女ではない彼らが過去にしたこと、そして今してることが痛切に胸を打ちます。少年犯罪とはただ少年が犯罪を犯しただけなのか。少年たちはなぜ裁かれないのか、加害者ではなく被害者家族は加害者家族はそして裁かれなかった彼らはどうなるのか。背景がじっくりと繋がっていく過程は息を飲んでページをめくることしかできませんでした。

そして明かされる真実とラスト。15歳の少年が起こしたにしては妙に完璧で妙に不器用な完成形は、どこまでも彼が思春期の少年で、きっと何もなければ…と考えてしまいます。ですが、物語の中の事実は冷徹にこの事件を終わらせにかかります。その結末があったからこそラストの数ページはより感動できるものでした。

少年と犯罪の物語と言い表してしまえば簡単ですが、そんな一言では表すことのできない濃密な物語でした。ぜひ渡辺篤人が何をしたのか見届けてください。間違いなく傑作です。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

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ISBN 978-4-04-912396-8