どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは沙川りささんの「鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫」です!
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かつて海沿いにあった小寺という領。そこは優秀な人格者が治める場所として領民は幸せに暮らしていたが、青山という領の者が鬼となり彼らを襲ったことで崩壊する。以降、小寺の人々は散り散りになり鬼から隠れながら暮らしていた。それから30年後、薬師の文梧は小寺の民を助けるため主水という青年と共に各地を巡っていた。一方、遡ること3年前小寺の領主である菊は元信という青年に窮地を助けられる。彼の剣技を見て自らの手で民を守りたいと感じた菊は元信に剣の教えを乞う。そして2人は次第に惹かれていくが、待ち受けていたのは過酷な運命だった。

第5回角川文庫キャラクター小説大賞優秀賞受賞作。帯の和製ロミオとジュリエットという謳い文句に惹かれて手にとった次第ですが、大当たりでしたね。とても面白かったです!

かつて存在した小寺という小さくも良き領主と良き民に恵まれた領。しかし突然青山という領の民が鬼となり小寺を襲ったことで彼らは長期に渡る逃げ隠れる生活を余儀なくされます。鬼となった青山の民は小寺の血を吸うという設定は吸血鬼のようで、文章からその恐ろしさと気味の悪さが伝わってきます。

物語は薬師・文梧の現在を描くお話と元信と菊の決して結ばれない2人という二つの時間軸で進んでいきます。

薬師の文梧は自らに課したある使命を持って小寺の民を助けます。薬師としてだけではなく、時に小寺の民を血を吸わんとする青山の民を倒し、時に自らの命を狙う青山の民を倒す。凛とした彼の戦いぶりは読んでいて背筋がぴんと伸ばされるかのようでした。そして彼らは竜胆という1人の少女を助けます。なぜか青山の領へ行こうとする彼女に同行することになった元信と彼の助手である主水。旅のなかで竜胆のことを知り、そして青山に近づいたところで…

一方、もう一つの時間軸では小寺の領主・菊と謎の青年・元信の悲恋が描かれます。命を元信に救ってもらい、彼の剣技を見て教えを乞うことになった菊。次第に彼の強さと優しさに惹かれ、元信もまた菊の美しさと力強さに惹かれていきます。しかし2人の恋は決して結ばれないもの。菊は小寺の領主であり、元信は…そんな2人ではありますが、共通の目的のため共に歩むことを決め青山の領へ戦いへ向かいます。

終盤では2つの時間軸が合流し、薬師の文梧が、彼の助手である主水が、そして竜胆が小寺と青山に纏わる鬼の歴史を断ち切るために戦うことになります。結末はこれ以上なく素晴らしいもので、竜胆の決断もよかったと思います。

和製ロミオとジュリエット。悲恋だけでは終わらない素晴らしい作品でした。気になる方はぜひ。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫



著者



沙川りさ



レーベル



角川文庫



ISBN



978-4-04-109204-0


表紙の画像は「版元ドットコム」様より