どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは葵遼太さんの「処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな」です!
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病気で彼女を失い留年した佐藤晃。二度目の高校三年生を迎えた彼は、始業式の日に同じクラスになった白波瀬巳緒に話しかけられる。誰とも仲良くしないと決めていた佐藤だが、遠慮のない白波瀬の性格によって近くの席のオタク男子の和久井、吃音持ちだけど綺麗な歌声を持つ少女・御堂楓と共に同盟を作りバンドを始めることになる。かつて死んでしまった彼女と共にバンドを組んでいた佐藤は、過ぎゆく日々の中に彼女と過ごした日々を思い出しながら学園祭に向けてバンド活動を続けていく…

発売前からTwitterで編集さんが頑張って推されていたこと、タイトルとあらすじが気になったこともあり購入。鮮烈な印象を残す素敵な青春小説でした。面白かったです。

物語は彼氏と初めて一夜を過ごした少女のプロローグから始まります。とても幸せで優しくて甘い朝。これからどんな物語が始まるのかと期待し、そしてこれからの物語を想像して切なくなる語りでした。

そして視点は主人公の佐藤へと移り、2回目の高校三年生を迎える彼のお話が始まります。留年したこともあり大人しくしようとしていた佐藤。しかしその希望は白波瀬というギャル風の見た目をした少女によって打ち砕かれます。遠慮無く距離を詰めてくる彼女に逆えず、オタク男子の和久井、吃音持ちの御堂という少女を含めた4人グループが完成。バンドを組み音楽をすることになります。

彼ら4人の出会いはきっと必然ではなくて、なにかの力が働いてしまった結果なんでしょうけど、一見凸凹に見える完璧なんかじゃない高校生たちが不確かなつながりでつながって音楽をやろうとする姿は印象的でした。

そして始まるバンド活動。受験生ということを忘れてメキメキと上達していく白波瀬、和久井、そして御堂の3人。しかし佐藤は死んでしまった彼女が残した悲しみにきちんと向きえないまま心に傷を抱えていました。

途中、回想で語られる佐藤の彼女・砂羽の姿は病院で過ごした時、そして砂羽の友人でありバンドメンバーであった藤田と3人で過ごしたものの描写がメインとなります。決して元気だった砂羽の姿は語られず、作中の表現を使うのなら二次関数的に落ちていく彼女の姿だけが描かれます。そのシーン全てが心を締め付け、そして佐藤がいない病室で彼女が何を思いどんな言葉を紡ぎ、どんな風に泣いていたのかを想像させます。

バンド活動は順調に進む中で、どうしても本気で音楽に向き合えない佐藤。そのことを藤田に見抜かれそれでも立ち向かえない。そんな中で終盤にある事件が起きます。このピンチを乗り越えて爽やかさと一緒に苦しみも悲しみもまとめて歌で消してしまえるのがこの作品のパワーだなと感じました。

タイトルを含めて鮮烈な印象を残すいい青春ものでした。気になった方はぜひ。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな



著者



葵遼太



レーベル



新潮文庫nex



ISBN



978-4-10-180191-9


表紙の画像は「版元ドットコム」様より