どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回紹介するのは人間六度さんの

きみは雪をみることができない

です!
⚠︎若干ネタバレありです
img_9784049142341_1

サークルの飲み会で芸術学部に通う岩戸優紀と出会った文学部一年の埋夏樹。彼は優紀に恋をして2人は夏を通して親密な関係に。しかし優紀は秋になると突然姿を消してしまう。もう一度優紀に会いたい夏樹は彼女の実家を訪れる。そこで知ったのは彼女が冬の間に冬眠をするという名前もつかない病を患っていることだった。優紀のことが好きな夏樹はなんとか彼女を支え隣にいようとするが…

第28回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作。作者の人間六度さんは第9回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞した「スター・シェイカー」でデビューしており、本作が2作目となります(とはいっても本作と同年受賞ですが)
正直よくある難病ものかと思っていましたが、丁寧かつ美しく描かれる現代の眠り姫の物語と素晴らしすぎるラストにとことんしてやられました。最高に面白かったです。

まず序盤。眠りにつく優紀のシーンが描かれます。初見ではこれがこの物語の中で描かれる眠り姫の姿か…程度の描写でしたが最後まで読み終わってから改めて読み直すとまた違った角度で見ることができますね…

1章では夏樹が優紀に出会い、恋をして、一瞬の煌めきのような夏を過ごして、そして優紀がいなくなるまでが描かれます。恋の描写もすごくよくて、ダイレクトに好きと伝えるわけではないのに夏樹がこんなに恋をしていて、こんなに優紀のことを思っているんだということが伝わってきます。そして優紀が夏樹の前からいなくなり、優紀の実家まで行って彼女が冬の間に眠る名前もつかない病気であることを知ります。

2章からは冬眠するという優紀に葛藤しながらも向き合う夏樹の姿が描かれます。大学生の夏樹の等身大の恋心や当たり前に好きな人を想う気持ち、でも普通には一緒にいられない優紀に対する感情。迷いや恐れがありながらも、それでも彼女が好きで一緒にいたいという気持ちが痛いほど伝わってきます。美しく、そしてどこか儚げな優紀もまた魅力的で夏樹がこれほどまでに惹かれてしまう理由もよくわかります。

そして物語は3章から動きだしラストへ向けて歩みを進めていきます。これまでは終わりのない雪原を歩くような物語でしたが、優紀の冬眠の真実が明かされ、そして迎えるラストは最高の一言。こんなにもやられたなんて思うラストを迎えた作品は久しぶりです。

あらすじやタイトルからオーソドックスな難病ものという印象を受けるかもしれませんが、丁寧に描かれる物語とラストにしてやられる最高の作品でした。気になった方はぜひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

きみは雪をみることができない



著者

人間六度



レーベル

メディアワークス文庫

ISBN

978-4-04-914234-1
表紙の画像は「版元ドットコム」様より