どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回紹介するのは塗田一帆さんの

鈴波アミを待っています

です!
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Vtuber鈴波アミのデビュー1周年配信の日。予定時刻になっても彼女は現れず突如失踪してしまった。鈴波アミの視聴者たちは彼女の復帰を信じて1年前のアーカイブを同時視聴しながら彼女を待ち続けることを決める。コロナウイルスによって徐々に社会も変化していく中で果たして鈴波アミは復帰するのか…

塗田一帆さんのデビュー作。本作は元々ジャンプ小説新人賞で金賞を受賞した短編作が元になっており、それを元に長編化したものを早川書房から出版というちょっと珍しい流れで発売された作品ですね。Vtuberものということもあるのですが、作者の方がYouTuberのKUNさんの初代編集者ということで気になって読んでみました(5年来のKUNキッズなので…)。さて作品はと言いますと…

はっきり言ってすごい。

とんでもない小説でした。最初はただの鈴波アミの一視聴者だった俺を俯瞰する形で物語を追っていました。でも途中から僕が<俺>になって強制的に2020年に戻らされて鈴波アミを推されて彼女を助けるためにページを捲るようになりました。没入感が半端じゃないです。なんなんですかこの引力は。200pの物語にこんなに引き込まれたことはないです。最高の読書体験でした。

まず序盤。物語はVtuberの鈴波アミがデビュー1周年配信に現れなかったとろこから始まります。一視聴者として彼女が現れるのを心待ちにしていた<俺>は鈴波アミが現れなかったことに動揺しながらも、視聴者たちに過去のアーカイブを同時視聴しながら彼女を待つことに。

物語の序盤は<俺>が鈴波アミを待つ物語で、Vtuberに関する豊富な知識に裏付けられたリアルな2020年を感じながら物語を追うことができましたね。

鈴波アミの配信アーカイブの同時視聴を通して読者は彼女のことを知るようになります。鈴波アミの配信スタイルであったり、彼女の人となりであったり、人気になるまでの過程であったり…その全てが奇跡のような連続で成り立っていて徐々にVtuber鈴波アミに引き込まれていきます。

しかし配信アーカイブを同時視聴するようのチャット欄が荒らされたことで物語は思わぬ方向へと転がっていきます。鈴波アミの配信アーカイブを同時視聴することはなくなり世間はコロナで徐々に追い詰められていく<俺>。それでも鈴波アミの復帰を信じてアクションを起こしていきます。

そしてここからがすごい。彼女のために推しのために必死で行動する彼の姿に没入していきます。これまで他人だった<俺>がまるで自分のように感じられるようになり、<俺>が狂おしいほどに鈴波アミを求めるようになる。本当にすごい引力でここまで引き込まれるのかと読んでいて驚きました。

ラストは文句なし。この物語にふさわしい最高の結末でした。これ以上はないです。

推しがいるならぜひ読んでほしい。本当に凄まじい引力と没入巻のある作品でした。オススメです。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

鈴波アミを待っています



著者

塗田一帆



レーベル

早川書房

ISBN

978-4-15-210096-2
表紙の画像は「版元ドットコム」様より