どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのはアンナ・カヴァン著、山田和子訳の

「氷」

です!
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☆感想☆

氷河期が近づく地球。そこで1人の少女を追う私がいた。姿を消した少女を探して車を駆り、船に乗り、ひたすらに少女を追い求める私。そんな私は旅路の中で長官という少女を追うヒントとなる人物に出会う。果たして私は少女と再び出会うことができるのか…

アンナ・カヴァンの名作長編小説。アンナ・カヴァンの作品は短編は読んだことがあったのですが、長編は今作が初めてです。というかイギリス文学の長編を読むのが初めてです。ずっと露文ばかり読んでいたので…本作を読むきっかけになったのは漫画「バーナード嬢曰く。」の3巻で「氷」が登場して興味を引かれたからです。ジャンルはSFと言って良いのか…氷河期が迫り来る世界でひたすらに少女を追う言葉にし難い魅力のある作品でした。面白かったです。

物語は主人公の<私>が少女を追うシーンから始まります。私は少女と過去に関わりがあった、少女は恐らくアルビノである、少女は結婚している、私という人物はそれなりに社会的な立場や権力がある人間である。そうしたことが断片的に開示されながら物語は進んでいきます。

物語の大半は現実かそれとも私が見る夢なのかわからない文章の連続で進んでいきます。現実かそれとも私が見る夢か妄想かはたまた幻想か…そうした何が事実で何が現実かわからない文章の中で物語は進んでいくので読み味はかなり特殊です。しかも文字密度も高いのでスラスラと読むことができません。しかしそうした読づらさと夢現な文章こそがこの物語の魅力なのだと読み進めるうちに気付かされていきます。

物語が大きく動くのは私が長官と呼ばれる存在に出会った後になります。少女の存在を知る長官という人物。彼からなんとかして少女を手に入れようともがき、少女を目の前にしてもまたもがき、迫り来る氷河期を前にあまりにも無力な自分を嘆く。私の感情に次第に心動かされていきます。

終盤で私が選んだいくつもの選択肢や、最後のシーンはこの作品でしか味わえないものでした。決して読みやすい作品ではない。明るい話でもない。しかし心に残るものがある。そんな作品です。気になった方はぜひご一読ください。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル




著者

アンナ・カヴァン

山田和子



レーベル

ちくま文庫


ISBN

978-4-480-43250-6

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