どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています。
さて、今回紹介するのは三田誠広さんの「いちご同盟」です!
中学三年生の良一はピアノが好きだが優秀な弟がいることもあり進路に悩みを抱えていた。そんな彼は野球部のエース徹也に試合の様子をビデオで撮影してほしいと頼まれる。それを見せたい相手はある病気で入院中の直美という少女だった。徹也を通じて直美と親しくなっていく良一。だが、徹也と直美の間に幼馴染という関係を超えた特別なものがあることを知る。自分の気持ちが直美に傾く中で彼女は良一に一緒に心中しないかと持ちかける…
1990年に発行されたあまりにも有名な青春恋愛もの。普段はここまで前の作品だと読んでも感想を書かないことも多いのですが、大学生活最後の一冊はこれと決めていたこともあり感想を書いていこうと思います。ここまで前の作品ならネタバレしてもよいかと思うのですが、普段からネタバレなしで書いているのでネタバレはしません。
ちなみに豆知識ですが、僕のブログのよく見に来てくれるサブカル好きな方向けに言うと「いちご同盟」は「四月は君の嘘」にも登場する作品です。
中学生三年生という思春期の中でもっと多感で精神的に不安定で、かといって青春にはちょっと手が届かない年齢。そんな彼らの物語です。主人公の良一はピアノが好きだが特段才能があるわけではなく、音楽学校を受験するか否かで揺れる少年です。そんな良一に声をかけたのは野球部のエースでまさに学校のスターである徹也。彼に自分の活躍をビデオに撮って欲しいというところから物語は始まります。
徹也がビデオを撮ったのは病室にいる直美という女の子のため。彼女は徹也の幼馴染で病気になる前から彼と親しい関係にありました。最初はただビデオを撮るだけだった良一も徐々に2人の間に溶け込んでいきます。女の子が苦手な良一がすんなりと受け入れられ、受け入れていく様子や巨大なBGMとして流れる良一が弾く感情的なピアノが胸を打ちます。
そして訪れる直美の変化。病室にありながらも元気な姿を見せていた彼女は少しずつ変わっていきます。その中で変化していく良一の想いと、周りの環境。受験に押し流され夏を夏と感じられないまま勉強に打ち込む中で、頑張っても取り残される良一。直美が特別だからこそ、自身に流れる血や自分が嫌になっていく徹也。そんな中で直美が告げた一緒に心中しようという言葉は重みがありました。
そして終盤。ゆっくりとしているようで急変していく事態。かつて自殺した小学五年生の男の子の言葉、不登校になった下馬の末路…死と生がリアルなものとして良一の周囲を渦巻くなかで彼が見て聞いて感じたもの。徹也と結んだ同盟。家族のこと。最後が幸せかどうかはきっと答えは出ないでしょう。しかし、彼らが中学生三年生という季節を通して感じたものがその答えのように思えます。
良一が見たもの全て、感じたもの全て。その全てが甘みと痛みを伴って最後のセリフに込められていたと思います。大学生という肩書きがギリギリ使える今日この作品を読めて本当に良かったと思いました。
それではこの辺で(≧(エ)≦。)