どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
森絵都さんの作品。「DIVE!」「カラフル」など有名な作品も多いですね。個人的には中学二年生の頃に読んだ「カラフル」以来の森絵都さんの作品になります。本作が発売されたのは1996年10月とのこと。24年前の作品ですね。しかし今なお色あせない魅力があり、僕の手元にある文庫もちょど2ヶ月前に重版した39版でした。長く愛されていますね。
さて、今回紹介するのは作者さんの「アーモンド入りチョコレートのワルツ」です!
この作品は前3編の短編で構成された短編集になります。それぞれのクラシックの楽曲がモチーフになったお話です。それら3編について簡単にご紹介。
子供は眠る
お金もちの章くんの別荘に親戚の子供たち5人が集まり、夏休みの2週間を過ごすのが毎年の恒例な智明。しかし今年の夏はいつも仲良く過ごしている5人に不協和音が生まれて…
夏休み。子供たちだけの別荘(正確には別荘を管理する小野寺さんがいます)。みんなの憧れの章くん。そして彼に従う智明を含めた4人。学校とは違う非日常を過ごす彼らは、最初はすごく楽しそうに語られますが、智明がちょっとしたことから章くんに疑問を持ってしまったことで5人は徐々に分裂していきます。青春ちょっと手前の中学生・小学生たちが抱えるもの、感情、心情、屈託がちょっとした会話の中にギュッと詰め込まれていて読んでいて胸にすっと刺さりました。最後に眠っていた彼らを誰が運んでいたのかわかるシーンにははっとさせられました。
彼女のアリア
不眠症になった少年が旧校舎で出会ったのはピアノを弾く女の子・藤谷りえ子。同じく不眠症だという彼女と話が弾み、少年は週に1回彼女のピアノを聴き話をするために旧校舎を訪れるようになる。しかしりえ子に関するよくない噂を聞き…
本作品の中で唯一学校を舞台にした物語。突然不眠症になった少年。彼が出会ったピアノを弾く女の子。すごく綺麗な出会いの中で、徐々に始まるすれ違い。最初は共有していた不眠症があっさりと治ってしまった少年。そしてどこか話がおかしいりえ子。2人がそれぞれに抱えるもの、そして知ってしまうりえ子の噂。でも卒業式の日にあぁして出会いより素敵なことをして、笑いえるのはとても素敵だなと思いました。すべてがハッピーエンドでした。
アーモンド入りチョコレートのワルツ
変人として有名な絹子先生の元でピアノを習う奈緒と君絵。ある日、ピアノ教室に絹絵先生の知り合いだというフランス人・サティが現れる。絹子先生以上に突拍子もない行動をするサティに戸惑いながらも、徐々に彼を受け入れていく。しかし君絵がサティのことを好きになり駆け落ちしようとしたことで絹子先生とサティの間に不穏な空気が…
表題作。とても優しくて温かいくせにどこか鋭い。そんな作品でした。ピアノを習う奈緒と君絵、2人を指導する絹江先生、突然現れたサティ。4人はとても仲が良くて、木曜日にはいつもワルツを踊って楽しそう。でも君絵がサティに恋をして彼と駆け落ちしようとしたことで、物語は不穏な方向へ。奈緒と君絵。2人の少女がなにもできずに絹子先生とサティのことをおろおろと見るしかないのが、とても子供らしくこちらも悲しい気持ちになってしまいます。しかしクリスマスの演奏会に向けて頑張る2人の姿、2人の成果をワルツで受け入れる絹子先生とサティ。くすっと笑ってしまうようなラストも含めて素敵な作品でした。
3編ともクラシックをモチーフに中学生を瑞々しく描いていた素晴らしい作品でした。今なお愛され続ける理由は読めばわかります。気になった方は