2020年12月

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは川澄浩平さんの「探偵は友人ではない」です!
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前巻の記事↓
前作「探偵は教室にいない」に続くシリーズ第2弾。このシリーズはシリーズ名的なものはないんですかね?それはさておき、約1年ぶりの真史と歩のコンビによる謎解きはとてもワクワクとさせてもらいました。面白かったです!ミステリということもあるので、簡単に各話の感想を。


ロール・プレイ
歩がかつての友人と再び仲良くなるお話。このお話であぁ歩もちゃんと中学生の男の子みたいに悩んだりするんだなと思いました。かつて塾が一緒だった鹿取という男子と一緒に体験した遠い日の、ほろ苦い思い出。水野先生は多分大学生らしくすごく焦っていたのもあるんじゃないんですかね…この事件については…と当時の歩もやっぱり歩なんだということに激しく納得しながら、鹿取と水野先生は学校で再会して何を話したんだろうなと思いに馳せるのも楽しいお話でした。

正解には程遠い
謎解きとしては、やはり暗号解読?ということもあって僕でも楽しく解けるものでしたね。そしてこのお話から本格参戦してくる彩香ちゃんがすごいうパワータイプでグイグイきますねw 彩香ちゃんの実家の洋菓子店の謎解き企画に協力することになった真史。そしてそれを手伝う甘いものに目がない歩。このお話が2人の距離感としてはすごく安心できるというか、2人らしいなと思いました。図もきちんとあって作中の2人と一緒に謎解きできたのも楽しかったです!

作者不詳
ミステリ的な部分はもちろん人間的な部分でもやられたなと感じた作品。美術室と美術準備室を舞台に繰り広げられる日常の謎。歩の謎解きもありますが、真相に近づくのは真史の方で、学校の先生とのやりとりやエナちゃんとの会話とか、真史が見るような普通の青春じゃなくて、そうじゃないものも学校には存在するんだよと訴えかけてくるような謎でしたね。


for you
これが1番好きでしたね!喫茶店での謎から物語が始まってこれが本題かと思いきや青春をガツンとぶつけてくる。歩くんのことはこのお話でますます好きになっちゃいましたねw そっか頭のいい彼でもこんなことに悩んでわざわざそのためにこんな行動するんだなって。そんな歩に対する真史の行動もいいですし、最後の1ページはとても彼ららしいなと思いました。

2巻もとても面白かったので3巻も楽しみにしています。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



探偵は友人ではない



著者



川澄浩平



レーベル



東京創元社



ISBN



978-4-488-02817-6


表紙の画像は「版元ドットコム」様より




どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは鈴木大輔さんの「育ちざかりの教え子がやけにエモい2」です!
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前巻の記事↓
ストーリー A

内容は、ひなたが風邪を引き看病をすることになった達也。彼のことをお兄と呼びいつも通りの距離感で接するつばきは汗をかいたから服を着替えさせて欲しいとお願いしてきて…一方つばきをはじめとする恋する中学生たち。手島美優が最近色づき始めたのに恋を嗅ぎつけたつばきたちは彼女の改造計画を始めるが…とこんな感じです!

〜恋に突っ走る中学生たち〜
シリーズ第2弾!200pちょっとの短い物語ながら鮮烈な印象を残すつばきのエモさ…そして恋に一生懸命で突っ走っていく女の子たち…これが青春か…今回も楽しく読ませていただきました!面白かったです!
まず序盤。風邪をひいたつばきの看病をすることになった達也。服を着せ替えて欲しいというつばきの頼みをことわれずに…いやー…このシチュエーションめっちゃ好きですね…去年までは幼かった歳の離れた幼馴染が急に大人になってしまったのを、半裸の後ろ姿で実感する…エロ…いやエモ…そして始める夏の中学生女子の恋愛協奏曲。1巻で一悶着あった豊田彩夏と仲直りして一緒に服を買って…みんなからみたつばきが見れるのめっちゃ面白いですね…彩夏もそうですし、菜月や美優からみたつばきはこんな感じなんだというのがわかって…まだ中学生なのに中学生らしくない視点で物事を見てるかと思いきや、小学生みたいな感情も垣間見える。リアルな質感が伴う彼女たちから見たつばき評は面白かったです。そして後半は恋に突っ走っていく女子たち。つばきは苛烈で、エモーションに任せるだけじゃなくて冷静なところもあってあの場面のあの登場の仕方であの解決方法はめっちゃカッコ良かったですね。エモです。ラストはやられました…そうでしたか…見てましたか…中学生にこんなにドキドキさせられちゃいますか…今回も最後まで楽しく読ませていただきました!面白かったです!

キャラ A
つばきは青春燃やして生きてますね。すっごく生き生きとしてます。恋する乙女で、恋を応援する乙女で、義理に厚い乙女で、エモーショナルガール。達也への言葉や表情も、友達に向ける言葉や表情も、その一つ一つがすごく瑞々しいです!美優ちゃんはめっちゃがんばったと思うのでおいしいものいっぱい食べて、夏休みはめっちゃ遊んで楽しい思い出作ってほしいですね…

最後に
今回も面白かったです!まだまだつばきのエモが見足りない!ラストの展開からこれからどうやって物語を続けていくのかめっちゃ気になる!3巻待ってます!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



育ちざかりの教え子がやけにエモい2



著者



鈴木大輔



レーベル



ガガガ文庫



ISBN



978-4-09-451862-7





毎年20作とかラノベの新人賞受賞作を読む。
大当たりもあれば、もちろん大外れもある。最近はあんまり大外れはないけど。

そんなこれまで読んできた新人賞受賞作の中でとりわけ印象に残っている作品がある。飛田雲之さんの「《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!」だ



この作品が面白いかどうかいったん置いておく。そんなことを話題にしたいのではない。この作家さんが徹底的に計算を尽くしてこの作品を世に送り出し、そして2作品目を出すことなく今日まで沈黙を続けていることだ。とにかく今日はこの作品を、この作家さんのことを知ってほしくてこの記事を書く。

「《このラブコメがすごい!!》堂々の三位!」はありとあらゆる計算が緻密に詰め来られた作品である。リーダビリティの高いタイトルはラノベ読みなら思わず「おっ」とか「おいおいw」となるに違いない。そんなタイトルから始まるのはいまは完全にあったことすら忘れ去られたライトノベル系のまとめサイトの管理人を主人公にしたラブコメだ。あらすじはこんな感じ

「面白い=売れる」なんて幻想だ――。

大手ライトノベル系まとめサイト「ラノベのラ猫」の管理人をしている高校生、姫宮新。
彼はとある記事作りをきっかけに、最近行われたネット小説賞《このラブコメがすごい!!》で三位に輝いた小説の作者が意中の少女、クラスメートの京月陽文であると知ってしまう。
彼女の投稿作品は厳密な意味でのラブコメではなかったが、ネット民の悪ふざけで炎上気味に盛り上がり、三位に押し上げられてしまったのだった。
そして、その悪ふざけを煽った張本人は「ラ猫」管理人の新。
だが、それを知った陽文は怒るワケでもなく、こう言った。
「わたしにラブコメの書き方を教えてほしいの」
新は陽文にドギマギしながらも、自分の考える「売れるライトノベル」の条件を示し、陽文が次の《このラブ》に向けて小説を書くのを手伝うことになる。
陽文が書いて、新がまとめサイトで宣伝する。
そうすれば、話題作になること間違いなし、と。ついでに陽文との距離も縮まれば言うこと無し。
だが、青春&恋愛偏差値ゼロの新は、陽文と距離が近づくほどに自分は陽文にはふさわしくないと思うようになってしまい……?
まとめサイト管理人と作家志望の少女が紡ぐ青春サクセスラブコメ!

このあらすじだけでいくつものツッコミどころをネット民は、ラノベ読みは見つけられるだろう。「ネット民の悪ふざけでランキング上位にされてしまった作品」「2018年当時でも完全に廃れたラノベまとめサイト」「売れるライトノベルの条件」…ラノベが好きなら、ラノベブロガーなら反応してしまう要素がこれでもか!と散りばめられている。

ストーリーはある意味王道。クリエイター×ラブコメという今の流行の先取り。これもすごい。しかしなによりもすごいのは作品全体に無駄が一切ないことだ。文章ひとつ、単語ひとつ、助詞ひとつとっても無駄なく洗練された文章。

その文章が、ラノベの感想を書く身としては狂おしいほど求めていたセリフを生み出す。

「(前略)作品を否定しても、君自身を否定しているわけじゃない」132p

「(前略)俺たちは所詮、外野だよ。ちょっと他のやつらよりも声がでかくて、影響力を持っているだけの外野だ。」223p

前者はライトノベル作家のヒロイン陽文に向けて主人公の新が放った言葉だ。
そうだ。少なくとも僕は作品を否定することはあっても作家さんを否定しているわけじゃない。これを作家さんが物語の中で言ってくれることがどれだけ救いか…
後者はまさに「そうだよな」とうなずいてしまうセリフ。いや、僕は声はちっともデカくないんですけど、ラノベの感想やラノベを話題にする僕らはどこまで言っても外野で作家さん側、クリエイター側には絶対になれないんですよ。作家さんとTwitterでいくら距離が縮まっても、しょせん読者は感想を言うやつらは外野なんですよ。

ということを当時Twitterで散々わめいたw

そしてこの「最高に話題性を秘めた作品」の唯一の誤算は「ラノベ読みたちがたいして話題にしなかったこと」だ。話題になれば売れてた。話題にする要素を存分に取り入れていた。誰が読んでも60点にはなる万人受けのストーリー。個人的には面白くて、すごく手のひらで踊らされてすごく楽しかった作品。本当に惜しくて惜しくてたまらない作品だ。

飛田雲之さんという超計算型作家(個人的に)の2作目が早く読みたい。


ちなみに僕の感想はこれ

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは森林梢さんの「殺したガールと他殺志願者」です!
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ストーリー A
内容は、最愛の人に殺されたいという願望を持つ淀川水面は死神を名乗る少女と出会う。彼女から最愛の人を殺したいという願いを持つ少女・浦見みぎりを紹介される。互いの利害が一致したことで協力関係を結ぶことになる水面とみぎり。不器用な日々の中で徐々に距離を縮めていく2人だが、殺し殺されたい関係の2人を邪魔する存在が現れ…とこんな感じです!

〜最愛の人に殺されたくて〜
第16回MF文庫J新人賞優秀賞受賞作!厨二病的でちょっとエキセントリックで暗いバックボーンを持つ水面とみぎりの徐々に縮まっていく距離感が楽しい作品でした!面白かったです!
最愛の人に殺されたいという願望を持つ水面はある日、死神を名乗る少女から最愛の人を殺したいというみぎりを紹介されます。利害の一致からお互いの目的を果たすために行動を共にする…というのが序盤の流れ。最初はこの作品の世界観にちょっと入って行きづらいところもありましたが、水面の軽快?なツッコミ?とみぎりの「うるさいです」というツンデレ?ツンツン?な反応でどんどん物語に引き込まれていきました!最愛の人を殺したいという願望を持つみぎりは水面を愛するために、水面をかっこよくプロデュース!水面はみぎりを愛するために彼女のかわいいところをいっぱい見つけて…言動がなかなか苛烈ですがw なんだかんだいって序盤から割とフルスロットルでラブコメしてる両思いボーイガール。めっちゃいいですね!好き!そして物語のが進むに連れて明らかになる2人の過去と、殺されたい/殺したい関係の2人を崩壊させようとする存在…水面の過去はなかなか凄惨ですね…刺青ですか…みぎりもなかなかですけど、水面のインパクトは強いですね。2人の関係を崩壊させようとしてくる奴はなかなか狂ってましたね…これは強敵です…終盤ではお互いがお互いに好きになりすぎて最後のような夜の学校探検をして、最愛の相手を殺そうとする敵と戦って…そして迎える不器用で、でも温かいラスト。水面とみぎりの関係が最後にこんな風に変化するの、めっちゃいいですね…最後まで楽しく読ませていただきました!面白かったです!

キャラ A
水面はなかなかいいツッコミしてましたねw 一人称での語りは最初は慣れなかったですけど終盤はクセになってしまいました!みぎりはかなり口が悪いですけど、実は普通に女の子してるのがもうめっちゃギャップ萌えでしたね。みぎりちゃん…そこで照れちゃうの…?ってところで照れるのマジでかわいいです…燕さん、女川さんといったサブキャラも魅力的でした!

最後に
結構いい終わり方だったな!と思いきやなにやら続刊があるようで…ここからどう続けていくのかめっちゃ楽しみですね!2巻!来春!了解!待ってます!

どんな人にオススメか?
ちょっと変わったラブコメが読みたい方は!殺されたい願望と殺したい願望を持つ2人のラブコメはちょっととっつきづらくてエキセントリックに感じるかもですが、距離の縮め方は甘々でかわいい!照れるみぎりちゃんかわいいよ!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



殺したガールと他殺志願者



著者



森林梢



レーベル



MF文庫J



ISBN



978-4-04-680075-6


表紙の画像は「版元ドットコム」様より


どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは鏡征爾さんの「雪の名前はカレンシリーズ」です!
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ストーリー A
内容は、異世界から襲来する「冬時間」と呼ばれる転生生物を感情を代償にして迎撃する人工天使の少女たち。語り部の四季オリガミはそんな少女たちのメンテナンスを行うカオナシとして日々ゴミのように扱われながら生きていた。そんなある日、最強の人工天使・赤朽葉カレンと出会ったことで彼の運命は変わっていく。感情を教えてほしいという彼女と共に戦い、そして失う。オリガ戦役記念都市を舞台にした物語が開幕する。とこんな感じです。

〜これは赤朽葉カレンを失う物語〜
講談社BOXの新人賞を受賞しデビューした鏡征爾さんの最新作。講談社ラノベ文庫はこうして講談社の色のある作家さんの作品を年1で最低出してくれるので好きです。ゼロ年代、ファウスト、世界系、君と僕、世界と自分、自意識…そんな僕らがかつて歩んできた、一片に触れてきた要素が散りばめられた素晴らしい作品でした。すごく面白かったです!
異世界から襲来する冬時間という襲撃者。それを撃退する兵器である少女たち人工天使、人工天使を整備する顔のない少年たち、彼らの舞台となるオリガ戦役記念都市。オリガミは戦いと少女たちの失われた感情だけがリアルな世界でカレンと出会い、恋にもならない感情を通じ合わせて、そして失います。
ここから先はすごく個人的な感想ですが、この作品は物語を楽しむ作品ではないと思います。断片的な、それこそ作中でオリガミが書く詩のような文章の束を一節一節を味わい、そこで生きるオリガミやカレンに触れて、優しいのに暴力的で清楚なのに耽美な文章に酔う。まだ十代だった頃の憧れとか憧憬とか、思春期の自意識とか、そんな何もかもを射影して投影して「あぁこれが欲しかったんだな」って思うような、そんな感情を求めるような作品だと思います。ゼロ年代的でファウストの遺伝子を感じて…カレンという圧倒的な存在感のヒロインを失うための物語。多くは語れないですが本当に傑作だと思います。最後の一行まで本当に素晴らしい作品でした!面白かったです!

キャラ A
キャラも説明しづらいのですが、カレンはこの物語の圧倒的ヒロインでした。最強の人工天使として数多の冬時間を滅ぼし、オリガミに感情を求めて、オリガミに温もりと繋がりを求めて、そして失われていく。圧倒的存在感。圧倒的ヒロイン性でした。

最後に
めっちゃ面白かったです!ちょっと言葉にしづらいですが、なんとなくずっと求めていた待ち望んでいた作品でした。1巻で綺麗に纏まっているので続刊はないですかね…?鏡さんの作品は次回作もぜひ読みたいです!

どんな人にオススメか?
ゼロ年代、ファウスト、講談社BOX、セカイ系。このあたりのキーワードにピンときた方は!どこか断片的で詩のような物語の中で描かれるカレンを失うお話はきっと鮮烈な読書体験を残してくれるはずです。気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



雪の名前はカレンシリーズ



著者



鏡征爾



レーベル



講談社ラノベ文庫



ISBN



978-4-04-06-521862-4


表紙の画像は「版元ドットコム」様より




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