どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは南木義隆さんの
さて、今回紹介するのは南木義隆さんの
「蝶と帝国」
です!孤児として血のつながらない祖父と祖母に育てられた少女キーラ。彼女は数奇な運命の末に帝政ロシアの貴族の一人娘エレナ一家の従者となる。キーラには思いを寄せる女性がいたが、彼女には夫がおりキーラの想いが届くことはなかった。そんな日々の中でキーラは主人と従者という枠を超えエレナと体を重ねていく。永遠に続くかと思われた2人の関係はエレナの祖母の死とユダヤ人の迫害をきっかけに変わっていく。モスクワで料理人として成功していくキーラ。貴族の娘として、またバレリーナとして成功を収めていくエレナ。革命の時代に2人はすれ違っていく…
南木義隆さんの作品。pixiv百合文芸コンテストを受賞し、デビュー作の短編はハヤカワから発売されている「アステリズムに花束を」に収録されています。そちらは未読ですので、今作が初挑戦になります。
一言で言うと帝政ロシア×百合×料理ものという作品ですが、帝政ロシアからソビエトへと変わっていくロシアを舞台に1人の少女が主人を愛し、想い人に恋をし、過酷な運命に流されながらも強く生きていく素晴らしい作品でした。面白かったです。
本作は三部構成となっています。エレナと共にまだ穏やかなロシアで平穏な少女時代を過ごす第一部。エレナと別れモスクワで料理人として名を馳せ1人の女性として逞しく生きていく第二部。そして革命が起きロシアからソビエトへと変わっていく激動の時代からラストを描く第三部。どの章も圧倒的でした。
第一部では孤児として拾われ、エレナの家で従者として働き今は独り立ちしている少女時代のキーラが描かれます。オデーサの地で怠惰な料理人として働き、友達と笑い合い、孤児とふれあい、想い人に恋心を募らせ、そして主人と従者の関係であるエレナと酒を酌み交わし体を重ねる…瑞々しくあまりにも美しすぎるこの光景は物語の最後にたどり着くと愛おしくてたまらなくなります。
しかしそんな平穏な日々はいつまでも続きません。オデーサの地で名を馳せたエレナの祖母の死、帝国によるある事件をきっかけとした苛烈なユダヤ人弾圧…死と暴力が永遠と思われたキーラとエレナを離れ離れに仕向けます。そして少女から大人になっていくキーラはモスクワの地で料理人として名を馳せる第二部が始まります。
エレナの家や料理の師匠であるヘンダーソンのおかげで料理の腕に自信があったキーラは紆余曲折を経て自分の店を持ち、それは彼女の心の隙間を埋めるように拡大を続けいつしかキーラはモスクワで一財を成した実業家になります。しかし成功と引き換えにキーラは徐々に精神を病んでいきます。この頃のキーラの空っぽさは胸が痛いです。
そして時代は革命へ。ロシアはなくなり労働者のための国ができ、キーラは時代と運命に翻弄されながら生きていきます。大切だったものを失い、迷い、復讐n走り、時に傷つきながらそれでも忘れられないもののために歩みを止めないキーラは獣のような美しさがあります。
ラストも文句なし。久しぶりに物語とはこういうものだという感覚を味わえる作品でした。圧倒的面白さ。やや過激な描写もありますが、この読後感を味わえるのはこの作品だけです。オススメです。
それではこの辺で(≧(エ)≦。)
表紙の画像は「版元ドットコム」様より
南木義隆さんの作品。pixiv百合文芸コンテストを受賞し、デビュー作の短編はハヤカワから発売されている「アステリズムに花束を」に収録されています。そちらは未読ですので、今作が初挑戦になります。
一言で言うと帝政ロシア×百合×料理ものという作品ですが、帝政ロシアからソビエトへと変わっていくロシアを舞台に1人の少女が主人を愛し、想い人に恋をし、過酷な運命に流されながらも強く生きていく素晴らしい作品でした。面白かったです。
本作は三部構成となっています。エレナと共にまだ穏やかなロシアで平穏な少女時代を過ごす第一部。エレナと別れモスクワで料理人として名を馳せ1人の女性として逞しく生きていく第二部。そして革命が起きロシアからソビエトへと変わっていく激動の時代からラストを描く第三部。どの章も圧倒的でした。
第一部では孤児として拾われ、エレナの家で従者として働き今は独り立ちしている少女時代のキーラが描かれます。オデーサの地で怠惰な料理人として働き、友達と笑い合い、孤児とふれあい、想い人に恋心を募らせ、そして主人と従者の関係であるエレナと酒を酌み交わし体を重ねる…瑞々しくあまりにも美しすぎるこの光景は物語の最後にたどり着くと愛おしくてたまらなくなります。
しかしそんな平穏な日々はいつまでも続きません。オデーサの地で名を馳せたエレナの祖母の死、帝国によるある事件をきっかけとした苛烈なユダヤ人弾圧…死と暴力が永遠と思われたキーラとエレナを離れ離れに仕向けます。そして少女から大人になっていくキーラはモスクワの地で料理人として名を馳せる第二部が始まります。
エレナの家や料理の師匠であるヘンダーソンのおかげで料理の腕に自信があったキーラは紆余曲折を経て自分の店を持ち、それは彼女の心の隙間を埋めるように拡大を続けいつしかキーラはモスクワで一財を成した実業家になります。しかし成功と引き換えにキーラは徐々に精神を病んでいきます。この頃のキーラの空っぽさは胸が痛いです。
そして時代は革命へ。ロシアはなくなり労働者のための国ができ、キーラは時代と運命に翻弄されながら生きていきます。大切だったものを失い、迷い、復讐n走り、時に傷つきながらそれでも忘れられないもののために歩みを止めないキーラは獣のような美しさがあります。
ラストも文句なし。久しぶりに物語とはこういうものだという感覚を味わえる作品でした。圧倒的面白さ。やや過激な描写もありますが、この読後感を味わえるのはこの作品だけです。オススメです。
それではこの辺で(≧(エ)≦。)
書籍情報
タイトル | 蝶と帝国 |
著者 | 南木義隆 |
レーベル | 河出書房新社 |
ISBN | 978-4-309-03051-7 |