カテゴリ: 純文学

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは柴崎友香さんの

「ビリジアン」

です!
FullSizeRender

☆感想☆

「春の庭」で芥川賞を受賞した著者の連作短編集。個人的には初挑戦の作家さんです。平成初期の大阪?を舞台に1人の少女の10歳から19歳の記憶が断片的に語られる読んでいて不思議な気分になる作品でした。面白かったです。

物語は山田解という1人の少女の目線から断片的に語られていきます。小学生の頃に見た黄色い空の日のこと、爆竹を鳴らすのが好きだった中学生の頃、謎の外国人と会話した女子高生の頃…10p前後の短いお話の連続で《山田解》という少女を見せられていきます。

連作短編ではありますが、各話の直接的な繋がりは主人公が山田解という少女であること以外ほとんどありません。各話はわずかな情報で彼女が何歳でどんな日常を送ったのかを知ることしかできません。曖昧な記憶の断片のような物語の連続です。

しかしその記憶の断片たちに不思議と惹きつけられます。山田解という少女にとっては、なんともないただの、もしかしたらちょっと特別な1日。その1日を追想するかのような独特な読み味のあるお話に不思議とのめり込んでいきます。

文章も非常に良いです。読みづらさや変な誇張がなく、あったこと起きたことが淡々と、しかしどこかインパクトが残る文章で描かれていきます。最初の黄色の日の冒頭は特に印象に残ります。

なかなか面白さを伝えることが難しい作品なのですが、この作品でしか味わえない追想という稀有な読書体験を得られる作品です。200p未満と短く、サクッと読めるので気になったかたはぜひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

ビリジアン



著者

柴崎友香



レーベル

河出文庫


ISBN

978-4-309-41464-5




どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは今村夏子さんの「あひる」です!
FullSizeRender

『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞した今村夏子さんの初の芥川賞候補作。表題作「あひる」に加えて「おばあちゃんの家」「森の兄妹」というそれぞれにつながりのある短編2作を収録しています。

今村夏子さんの作品は初めて。先日、書店であひるが描かれた表紙な惹かれて購入しました。以下、本作に収録されている3作品の簡単な紹介と感想です。

あひる
表題作で第151回芥川賞候補作。あひるを飼い始めてから子どもがよく遊びにくるようになった家を舞台にした奇妙でどこか恐ろしい作品。平易な文章であひるを飼い始めてからの日常を描きながらも、ふいに顔を覗かせる違和感や不安感が鮮烈に印象に残ります。あひるののりたまは本当に同一人物(同一あひる?)なのか、なぜこんなにも多くの子供たちが家を出入りするようになったのか、深夜にやってきた子供は…奇妙な読後感が印象的な作品です

おばあちゃんの家
自宅のすぐ近くに住むおばあちゃんとみのりの交流を描いた作品。インキョとよばれ1人で暮らすおばあちゃんの元へ洗濯物を持っていき共にご飯を食べたりするが役目のみのり。しかし成長するにつれてその役目はなくなりおばあちゃんも少しずつ変わっていきます。しかしおばあちゃんの行動の謎は後述の「森の兄妹」でゆるやかに明かされていきます。

森の兄妹
モリオとモリコ、もりが名前につく2人を主人公にしたお話。山に入りおやつと称して自然のものを食べる兄妹が出会ったのは窓から顔を覗かせるおばあちゃん。おばあちゃんは2人にあめを渡すなど細やかな交流をしていくが…この作品を読むことで「おばあちゃんの家」をよんで感じた奇妙なおばあちゃんの行動にもどこか納得がいくような感覚になりました。実際、おばあちゃんはもう二度と現れなかった2人を探していたのでしょう。ぼくちゃんにみんなあげるために。

以上です。今村夏子さんの文章はとても読みやすいながら読者を掴んで離さないような不思議なパワーがあると感じました。これからも機会があれば読みたいです。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



あひる



著者



今村夏子



レーベル



角川文庫



ISBN



978-4-04-107443-5


表紙の画像は「版元ドットコム」様より

あひる (角川文庫)
今村 夏子
2019-01-24



どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
新年度が始まってしばらく経ちました…まだまだ慣れるには時間がかかりそうです…

さて、今回紹介するのは中村航さんの「ぐるぐるまわるすべり台」です!

表題作の「ぐるぐるまわるすべり台」と「月に吠える」という短編が収録されています。「ぐるぐるまわるすべり台」は第130回芥川賞候補作、そして野間文芸新人賞受賞作となっています。

ぐるぐるまわるすべり台はなんとなく勘のいい人ならわかるかもですが、The Beatlesのヘルタースケルターが由来のようです。The Beatlesを知らない方だと沢尻エリカさんが主演した映画の方を思い浮かべるかもしれないですね。

独特のユーモアとテンポで刻まれる不可思議で、それでいてどこか安心感・懐かしさがある文章は読んでいて楽しいですよね。大学を辞めた主人公の僕が塾講師をする傍らバンドのメンバーを募集。ロックでそれでいて愛すべきメンバーたち。そんな彼らを見て僕が突き動かされていきます。

塾講師として指導する一人の不思議な感性を持つ生徒も、この作品にかけがえのない魅力を与えていました。全て分かっている。だから思いだす。そんな勉強法は馴染みのないものですが、きっと彼の特別なルールは彼自身を特別にして・平凡にして誰かを特別にするのでしょう。

「月に吠える」は「ぐるぐるまわるすべり台」の登場人物が出てくるお話。愛すべきロックなバンドメンバー千葉が小笠原さんという女性を笑わせるためにてつろーと協力していく様子を見て、僕がなぜ彼らをバンドメンバーに選んだのか分かった気がしました。

読むとちょっと楽しく幸せになれる不思議な物語。The Beatlesのヘルタースケルターを聞くとさらにこの作品の魅力を知ることができると思います。


どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
今日から大学が始まってしまいました…早速課題が出たので頑張ります( ̄^ ̄)ゞ

さて、今回は久しぶりに純文学の紹介ということで、中村文則さんの「掏摸」を紹介します!

文章力 ☆☆☆☆☆
文句無しの満点ですよ。そもそも文章力で中村文則さんに敵う作家さんは、片手で数えるほどです。何と言っても、掏摸描写が圧倒的。読者を自分自身が掏摸しているように、思わせることができるなんて…驚くような文章力はありませんが、ねじ伏せられた。そんな感じです!

表現力 ☆☆☆☆
決して悪くはないですし、むしろ良いです。しかし、子供の描写が甘かったです。いい意味でも、悪い意味でも子供が子供らしくなく、子供が子供として物語に存在していませんでした。このストーリーなら子供ではなく少年か青年のほうが良かった気も…

総合 ☆☆☆☆☆
非の打ち所がない作品でした! 掏摸をする主人公と、彼を取り巻く環境。それを文章で描き切った中村文則さんにやられました。「王国」という作品で、実質的な続きも描かれているようなので、そちらも読んでみたいと思います!

それではこの辺で(≧(エ)≦。) 
明日は漫画を紹介します( ̄^ ̄)ゞ

憤りしかないです。


芥川賞は又吉さんが受賞しました。過去に一応作品紹介したので、よろしければそちらもどうぞ↓


はぁー、ため息ですね。
いや、別に芸人が芥川賞とることに怒ってるわけじゃないんですよ? 辻仁成さんの「海峡の光」は素晴らしい作品でしたから受賞には納得ですし、全体として素晴らしい作品か、どこか良い点があれば文句は言いません。ただ、あのレベルが芥川賞受賞するなら、芥川賞なんてもういりませんよ。

芸人に芥川賞を受賞させたいのか、素晴らしい作品を書いた作家に芥川賞を受賞させたいのかどっちなんですか? 素晴らしい作品は見放されて、話題作りに走るんですか芥川賞は?

一応このブログはライトノベル系ブログですが、ライトノベルと同じくらい純文学も好きなので、つまらない作品が受賞してしまったことには失望しました。もう、芸人に強制的に小説書かせて芥川賞(笑)でもやったらいいんじゃないんですか?

現代純文学はたった一つの選択ミスで、その翼をもがれました。僕は1人の純文学読みとして、本当に悲しいです。

↑このページのトップヘ