カテゴリ: 一般文芸・キャラ文芸・ライト文芸

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは水原涼さんの

「恋愛以外のすべての愛で」

です!
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☆感想☆

純文学の新人賞を受賞しデビューし、大きな賞の候補になるもそこから単著は出せずにいる小説家の遥。彼は幼い頃から小説を書き続けていた幼馴染のすずがいた。しかし彼女は大学で小説を学ぶもいまだにデビューできずにいた。そんなある日、すずと一緒に小説を創り新人賞に応募することになる。だがすずの体は病に蝕まれており、彼女に残された時間はわずかだった。果たして遥とすずは小説を完成させることができるのか…

水原涼さんのデビュー2作目。私小説的な側面があるのかな?と読んでいて思いました。難病もの、と一言でくくれない読者に鮮烈な印象を残す青春ものでした。面白かったです。

物語は遥の日常から始まります。小説家としてデビューするも単著を出せずにいる。書いては消してを日々繰り返し、喫茶店でバイトをしながら食い繋いでいる。短いシーンに確かなリアルを感じます。

そんな遥の幼馴染で同じく小説を書いているすず。彼女は大学で小説の書き方を学ぶもまだデビューできずにいる。そんな彼女と小説を共作し、新人賞を受賞してデビューすることを目指します。

鳥取から上京してきた遥とすずの恋愛ではない関係性、距離が近づいたり離れたりした学生時代の思い出、2人を繋ぐ本と小説執筆…幼馴染という言葉以上の特別さがどこか淡くて優しくて印象に残ります。

個人的に印象的だったのはライトノベル作家である三田村とのやりとり。単著を出せずにいる純文学作家である遥とアニメ化も決まっている人気作家の三田村。ライトノベルを中心に純文学も読む身としては2人の会話は強く印象に残っています。ライトノベル、3000冊とか読んでもなんもわからないので三田村の話していることも遥が話ていることも多分正しいです苦笑

文章もよかったですね。小説の本質は物語にあると思っていますが、文章あっての小説ですし、文章がいかに大事かがよくわかります。この作品は文章の作品だと思います。

物語は中盤以降、悲観的な色が強くなっていきます。容態がどんどん悪くなっていくすず。なんとか小説を完成させようとする遥。何かに縋るように、2人の絆が解けないように、必死で生きていく遥とすずの姿が印象的でした。

結末はこの物語にとって当然の帰結なのかもしれません。ですが難病ものと一言でくくってしまうには、泣ける物語と一言で終わらせてしまうには、あまりにも読者に残すものが多すぎる作品です。愛は恋だけではない。家族でもない、友達とも言い難い、小説が繋ぐ2人の物語を存分に楽しませていただきました。

じわりと心に残る作品です。気になった方はぜひご一読を。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

恋愛以外のすべての愛で



著者

水原涼



レーベル

星海社FICTIONS


ISBN

978-4-06-539971-2

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは人間六度さんの

「烙印の名はヒト」

です!
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☆感想☆

介護施設で働くケアロボットのヒト型アンドロイドのラブ。彼女は施設入居者であるカーラ・ローデリック博士に依頼され彼女を絞殺してしまう。人を殺すことができないはずのロボットが人を殺す。その汚名を返上するためにラブは追手から逃げることに。ロボットを人間と同様に扱うことを求める人々やロボット排斥論者との戦いの果てにラブは何を思うのか…

人間六度さんの新作!いまだにデビュー作の「スター・シェイカー」積んでます!すみません!今作はハイスピードが逃走劇&バトルとロボット三原則的な側面からのロボットへのアプローチが魅力のSFでした。面白かったです!

物語は介護施設でケアロボットとして働くラブが人を殺してしまうところから始まります。介護施設でケアロボットとして働くラブ。そんな彼女はロボットは人を殺せないという制約を破って入居者のカーラを殺してしまいます。SFは入りが硬い作品が多いですが、流石の人間六度さん。すっと物語に入っていける序盤は見事の一言です。ケアロボットの設定もよかったですね!

人を殺してしまったことで無期懲役の判決を下されるラブ。しかし人権を持たないウエイツというロボットであること、人を殺すようにデザインされていないはずのロボットが人間を殺してしまったこと。そのことに疑問をもち汚名を返上するためにラブは逃亡します。

ここからはスピード感あふれる逃亡劇とバトルが続いていきます!自分がなぜ人を殺したのか。様々な人と出会い己に問うラブ。介護施設にいる頃からラブのことを特別に想っていた同じくロボットのマーシー。傭兵のアイザック・コナー、人間とロボットの絡みが大好きなスラッシャー…個性的で魅力的なキャラが繰り広げる会話劇も魅力的でした。

ロボットであるラブが自覚する自我<メタ>やロボットたちが持つ心象風景、何をすればロボットは人間になり、何を保てば人間に近づくのか。ページが進むごとに明らかになっていく過程もよかったですね。ロボットに対する作者の解釈を存分に楽しめるのがSFの魅力だと改めて気付かされました。

終盤に差し掛かったあたりの超ド級なバトルシーンとラストはとても印象的でした。500pとかなり分厚いですがその厚みを感じさせないテンポが良いSF作品でした!値段もそれなりですが、それに見合う面白さです!気になった方は!


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

烙印の名はヒト



著者

人間六度



レーベル

早川書房


ISBN

978-4-15-210413-7

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのはさちはら一紗さんの

「ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!」

です!
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☆感想☆

人と喋るのが得意ではない小学六年生のヤコ。そんな彼女は自分が表現できるダンスを踊り、顔を隠して動画として公開しネットで人気となっていた。そんなある日、ヤコがいつも踊っている夜の公園に1人の少年がやってくる。リヒトという少年に誘われて一緒にダンスを踊ったときにヤコは誰かと一緒に踊る楽しさに気づく。リヒトに誘われてダンスの大会に出ることになったヤコは同じクラスでバレエを習っているヒオを仲間にすることに。果たして3人はダンス大会を勝ち抜くことができるのか…

さちはら一紗さんの作品。個人的には「彼女は窓からやってくる」以来のさちはらさんの作品です。小学六年生のヤコの感情が等身大に表現されたダンスをテーマにした作品として楽しく読ませていただきました。面白かったです。

物語はヤコがリヒトと出会うところから始まります。引っ込み思案で喋るのが得意ではないヤコ。そんな彼女が唯一自分を表現できるのがダンス。有名な曲のダンスを踊っていとこのお姉ちゃんに動画をアップロードしてもらってネットの世界で人気。そんなヤコがいつも通り公園で踊っていると、リヒトという中学一年生の男の子がやってきて一緒にダンスを踊ることになります。誰かと踊ることの楽しさに気づくヤコの表情が印象的なシーンでしたね。

そしてヤコはリヒトに誘われて一緒にチームを組んでダンス大会を目指すことに!メンバーが1人足りない!ということでヤコのクラスメイトであるバレエを習っているヒオに声をかけることに。しゃべるのが得意ではないヤコが頑張ってヒオに声をかけるシーンは印象的でした!

しかしヒオは踊りでプロになることを目指しており、ヤコの誘いには簡単に頷きません。そんなヒオにヤコはダンスバトルを持ちかけます!ダンスで戦って、感情を表現して、お互いの気持ちをぶつけ合う。ダンスを披露する中でお互いのことがわかっていく過程がすごくよかったです!

そして中盤以降はダンス大会での勝利を目指して練習することに!リヒトの過去が明らかになったり、3人の結束力が徐々に強くなってチームとして強くなっていく過程が素晴らしい!リヒトのライバルであるライジも魅力的でしたね!

終盤はダンス大会の一番の盛り上がりを存分に味わうことができて、最後まで楽しくよませていただきました!児童書(YA?)ではありますが、いろんな方に読んでいただきたい作品です!もちろんダンスのことを知らなくても楽しめます!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!



著者

さちはら一紗



レーベル

カドカワ読書タイム


ISBN

978-4-04-684460-6

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さて、今回感想を書いていくのは入夏紫音さんの

「古川くんと二ノ瀬さん 七草寮青春推理譚」

です!
⚠︎ネタバレはないつもりですがミステリなので気になる方は既読後にお読みください。
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☆感想☆

学生寮・七草寮で暮らす古川景夏と二ノ瀬あかる。気が合う2人は何かと一緒に行動を共にしていた。しかし好奇心旺盛な二ノ瀬に巻き込まれて古川は学校やその周辺の謎に遭遇することに。盗まれた二ノ瀬の傘の行方、死んだはずの生徒の名前が記された創部届、吹奏楽部の部長のタオルを盗んだ犯人、七草寮に残されたタイムカプセルのパスワード、そしてダーツ同好会の謎・・・2人はどんな謎を解決していくのか・・・

第23回『このミステリーがすごい!』大賞隠し球作品。学校をメインの舞台にした人が死なないミステリとして楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は連作短編形式で進んでいきます。各話50p〜70p前後で謎解きがされていきます。イケメン?で頭が切れる古川くんと好奇心旺盛で美少女の二ノ瀬さん。探偵役の古川くんと助手役の二ノ瀬さん。2人のやりとりは見ていて楽しいです。

ミステリとしては人が死なないミステリ&学校を中心に起こるちょっとした事件を解決していくものなので、あっと驚くような謎はないです。しかし古川くんが丁寧に謎を解き明かしていく過程はミステリの面白さをぎゅっと濃縮しています。

学園ミステリ、人が死なないミステリとしての面白さもあるのですが、青春ものとしても魅力的です。二ノ瀬さんが所属する生徒会メンバーたちとのやりとりや、古川くんの腐れ縁である柚月とのやりとり、そして普段は仲良しだけど終盤で関係性に変化を見せる古川くんと二ノ瀬さんの関係性に青春を感じます。

個人的に一番好きだったのは二章のAll eyes on  youというすでに死亡している生徒が申請した部活の創部届の謎を探るお話。謎が明かされていく過程やすでに死亡している生徒にまつわるお話など過去と今がリンクしつつ明かされる謎が良かったです。

青春ミステリ、学園ミステリ、人が死なないミステリとして楽しく読ませていただきました。気になった方はぜひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

古川くんと二ノ瀬さん 七草寮青春推理譚



著者

入夏紫音



レーベル

宝島社文庫


ISBN

978-4-299-06746-3

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは東堂杏子さんの

「古典確率では説明できない双子の相関やそれに関わる現象」

です!
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☆感想☆

双子の兄妹である斉藤勇魚と真魚。2人は広島と福岡でそれぞれの生活を送っていた。勇魚は友人に恋人を奪われたショックを抱えながら、真魚は叔母に叶わない恋心を抱きながら日々を過ごしていた。そんなある日、2人に20歳離れた弟が誕生する。弟の誕生をきっかけに勇魚はマンションの隣室に住む飯田さんと、真魚は幼馴染である市原と距離を近づけていく。双子が離れた場所で送る青春の行き着く先は…

第31回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞、川原礫賞受賞作。最近は賞をとってMW文庫からデビューされる方の作品は女性向けな印象が強かったですが、今作はしっとりとした青春小説でした。二十歳の感情と行動力を鮮やかに描く青春小説でした。面白かったです。

物語は失恋の傷が癒えない勇魚が漫画研究部と葉月先輩というオタク男と性行為をしようとする場面から始まります。ちょっと衝撃的な始まりですが、この後すぐに勇魚はマンションの隣室の飯田さんとセックスします。序盤は恋人を親友に取られた心の傷の深さで読者をぐさりと刺していくように勇魚が描かれます。

一方の真魚は20歳も年下の弟ができたこと、好きな人である叔母が結婚してしまうことを知りどこか荒れ気味に。真魚は勇魚と違い実家に住んでいることもあり、環境の変化を直接受けているのでそれが感情の起伏に直接つながりますね。

そして物語は勇魚と真魚の視点を交互に入れ替えながら進んでいきます。広島で隣室の飯田さんと恋をする勇魚。北九州で自分を壊していくかのように幼馴染の市原と体の関係を持つようになる。2人を繋ぐのは双子という関係性と20歳も年下の弟という存在しかない。でもどこか繋がっていて、リンクするような2人の生活に次第に飲み込まれていきます。

もちろん2人の生活には様々な問題が起こります。勇魚は飯田さんと常にうまくいくわけではなく、飯田さんのことを泣かせたり、逆に勇魚が不安になったりします。真魚も叔母への気持ちばかりではなく、塾でバイトをしたり市原と笑顔で過ごしたりもする。どうしようもない心の傷を抱えながらも、苦しみながらも、激流と緩やかな流れを繰り返しながら2人は青春を過ごしていきます。

終盤、実家に帰った勇魚と真魚の短いやりとりや、飯田さんや市原を巻き込んだ楽しい日々は印象的でしたね。鮮やかで苦しいけれど美しい。そんな青春を楽しませていただきました。青春もの好きならぜひご一読を。オススメです。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

古典確率では説明できない双子の相関やそれに関わる現象



著者

東堂杏子



レーベル

メディアワークス文庫


ISBN

978-4-04-916273-8

表紙画像のリンク先


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