カテゴリ: 一般文芸・キャラ文芸・ライト文芸

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは六つ花えいこさんの

「聖女の、遺産」

です!
9784101803265_600

☆感想☆

幼いころに両親に先立たれ、祖父母の家で育てられた女子大生の片峰奈枝。しかし奈枝が16歳の頃に祖父が、20歳の頃に祖母が亡くなってしまう。生きる力を失いかけていた奈枝は祖母の形見のタンスから異世界に足を踏み入れてしまう。そこで出会ったのはセイことセイクリッドという名の少年。彼は私生児ということもあり兄から虐げられていたが、奈枝と出会ったことで生きる意味を見つけていく。そんなセイのことを放っておけない奈枝は度々異世界に訪れてはセイのお世話を焼いていくが、現実世界と異世界は時間の流れが異なりセイはどんどん大人になっていく。生きる場所も時間も違う二人の恋路は…

六つ花えいこさんの新作。個人的に六つ花えいこさんの作品を読むのは「かくして魔法使いノイ・ガレネーは100年後、花嫁となった」以来ですね。今作は現実世界と異世界を行き来できる女子大生が異世界のセイに恋する恋愛小説として楽しく読ませていただきました。面白かったです。

物語は奈枝が異世界に足を踏み入れるところから始まります。両親を幼いころに亡くし、奈枝のことを本当の娘のように愛してくれた祖母まで失い天涯孤独の身になった奈枝。もういっそ…と思っていた時に祖母の形見のタンスから異世界へ。そこでセイと出会い二人はなんともない交流をします。この出会いがセイにとっては救いで、奈枝にとっては生涯忘れられない出会いになるのがすごく素敵でしたね。

私生児ということもあり兄からイジめられてボロボロだったセイのお世話を焼くことにした奈枝は現実世界と異世界を行き来することに。しかし現実世界と異世界は時の流れが異なり、奈枝が異世界に行くたびにセイは大人になっていきます。無料だった少年は剣を身に着け、部下を増やして着実に大人になっていきます。そんなセイのことを弟扱いしたい奈枝でしたが、セイは幼いころの救いと憧れから奈枝のことを自分を助けてくれた聖女とは思えなくなっていく。最初はセイの方が幼かったのに徐々に奈枝の方が幼くなっていく関係性が非常に良きです。

しかしそんな二人の関係は些細なすれ違いで変わってしまいます。普通の人ならちょっとした喧嘩という出来事。しかし現実世界と異世界という世界を隔てて、さらには時間の流れも違う二人にとっては決定的な変化で…時間の違いが二人を容赦なく残酷にすれ違いさせます。

ですがセイへの想いを止められない奈枝の願いは叶って奈枝よりも大人になったセイと再会して…ここからがまた面倒だったのですが、長い時間と世界の壁を乗り越えて想いが通じ合った二人には感動しましたね…あまりにも一途で素敵な恋愛小説でした。恋愛ものを読みたい方はぜひ。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

聖女の、遺産



著者

六つ花えいこ



レーベル

新潮文庫nex


ISBN

978-4-10-180326-5






どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは岩倉文也さんの

「きみが物語になる前に」

です!
9784065434055_600

☆感想☆

不登校の僕はたまたま歩道橋から飛び降り自殺をする少女の姿を目撃してしまう。しかし少女は死ぬこともなければ怪我をすることもなかった。なんと彼女は物語の世界から迷い込んだのだという。シオリと名乗る少女を助けるために彼女について調べ始める僕。そしてついに少年はシオリの手がかりである一冊の本に辿り着くが…

岩倉文也さんの新作!「透明だった最後の日々へ」「魂に指ひとつふれるな」が面白かったので新作楽しみにしてました!今作は少女性をテーマに熱かったちょっとかなり不思議な物語でした

物語は主人公である僕がシオリに出会うところから始まります!不登校になり地方都市の繁華街を夜な夜なうろつく僕。そんな彼は歩道橋から飛び降りる少女を目撃します。しかし少女は死んでおらず傷一つなくて…印象的な物語の始まり方でしたね。

そして二人は少しずつ距離を縮めていくことに。シオリと名乗った少女は主人公以外の目には見えておらず、ありとあらゆる物語の少女性を集めた存在。そんな彼女に近づきたい、助けたいと願ってしまった主人公は徐々にシオリに惹かれていくことに…ここからは割と概念性の強い物語になって好き嫌いは分かれると思いますが、個人的には好きでした。

シオリという存在の手がかりを示す本を見つけた主人公。しかしそれはシオリを解放することではなく、自分も…という展開で物語はさらに方向転換していきます。メタフィクションともまた違うこっちの方向に物語が転がっていくのか!という感覚はなかなか説明しづらく、評価は難しいのですが独特の満足感がある作品でした。岩倉文也さんの作品は好きなので今後も作品楽しみにしてます。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

きみが物語になる前に



著者

岩倉文也



レーベル

星海社FICTIONS


ISBN

978-4-06-543405-5

表紙画像のリンク先




どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは深水紅茶さんの

「いばら姫とおやすみ。」

です!
9784040762067_600

☆感想☆

仕事の忙しさから朝の通勤電車でうたた寝をしてしまったデザイン会社に勤める24歳のOL・雨海時雨は自分の肩に寄りかかって眠る女子高生・篠森いばらと出会う。不眠症だという彼女は時雨の肩に寄りかかっているときに久しぶりに眠ることができたので、一緒に寝て欲しいと言う。最初は断る時雨だがなし崩し的に一緒に寝ることに。いばらとベッドを一緒にする日々の中で美大時代の同級生・瑠奈と再会することになるが…

深水紅茶さんの作品。個人的には初挑戦の作家さんです。OLと女子高生の百合として楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は時雨といばらが出会うところから始まります!満員電車。連日の仕事で疲れきってうたた寝をしている時雨。そんな彼女は自分の肩に寄りかかって眠るいばらに出会います。ただ肩を貸しただけ。それで終わるはずだった関係は、不眠症のいばらが時雨と一緒なら眠れたという事実で続いていくことになります。

最初は良識のある社会人としていばらと一緒に眠ることを拒否する時雨。しかし寝れないいばらは眠るためにと時雨に頼み込んで一緒に眠ることに。最初はいばらが住むカフェで一夜を明かしていましたが、時雨の家で一緒に眠ることになり、いつしかそれが当たり前になり…距離の縮め方が絶妙で一百合ファンとしてこの過程は大満足でしたね。

しかしそんな日々は続かず、時雨が学生時代を一緒に過ごした瑠奈が現れます。生活力皆無だった瑠奈に色々と世話を焼いていたこともあり、いばらにしていること以上の過去がある時雨。もう一度時雨と一緒に過ごしたいという瑠奈と揺らぐ時雨に嫉妬とそれ以上の感情があふれたいばらは…このジェラシーが百合好きとしては最高でしたね。

終盤も文句なしの結末に向かう過程が美しかったです。名作百合ここにありと言った内容で大満足でした。OLと女子高生の歳の差百合が読みたい方はぜひ。オススメです

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

いばら姫とおやすみ。



著者

深水紅茶



レーベル

富士見L文庫


ISBN

978-4-04-076206-7





どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは東崎惟子さんの

「君を狂気と呼ぶのなら」

です!
9784101803197_600

☆感想☆

平凡な家庭で育った少女の日常は新興宗教の訪問勧誘によって変わってしまう。宗教勧誘のお姉さんが置いていった聖書。それに少女が興味を持ってしまったがゆえに家族はバラバラになっていく。新興宗教にのめり込む母親、それに呆れて家を出て行ってしまう父親、妹のことを心配しつつも母親に愛想を尽かし家に寄り付かなくなった姉、そしてバラバラになった家族のために神様の声を聞こうとする少女…家族が修復不可能になるまで成長した少女を待ち受けていたのは残酷な現実だった…

〜少女の狂気は終わらない〜

東崎惟子さんの新作。前作「美澄真白の正なる殺人」が面白かったので楽しみにしていました。本作は新興宗教によって家族をめちゃくちゃにされた少女による復讐サスペンスとして楽しく読ませていただきました。面白かったです。

物語は三章構成で進んでいきます。なんといっても圧巻なのは一章でしょう。平和な家族が新興宗教によってボロボロに破壊されていく過程がこれでもかと丁寧に描かれていきます。訪問勧誘にやってきた王国の暁という新興宗教の女性。その女性からもらった聖書に興味をもってしまった少女。母親と一緒に聖書を読み、訪問勧誘の女性と会話をし、心を許してしまったがために崩壊が始まります。

新興宗教の施設で徐々に洗脳されていく母親。父親や姉は母親を止めるも言うことを聞かず、母親に呆れた父親は家を出ていき、姉も家に寄り付かなくなります。母親は新興宗教を広めることで、教えを守ることで家族が元通りになると信じてさらにのめり込み、家族をつなぎとめるのは私しかいないと少女は神の声を聞こうと無理をした結果、精神病由来と思われる神の声が聞こえるようになります。

一章の内容は壮絶ではありますが、読む手が止まらない魅力があります。新興宗教なんて絶対にハマるはずがない、なんて思っている人がこうやってのめり込んでいくんだな…という凄みがあります。

そして成長した少女は人生初の恋をすることに。しかしここからさらに崩壊が進んでいきます。王国の暁では不純異性交遊は許されていないため、このことが母親に知られて少女は…ここまでも壮絶な物語でしたが一章の終わりをはじめ、とんでもないインパクトがありました。

二章以降は復讐の物語に転じていきます。ジャンヌダルクが一つキーワードとなり、一生では幼く搾取されるだけだった少女がまさに救国の英雄として自分を害してきた者たちに立ち向かっていきます。まさに人間離れした、といっていい復讐劇でしたね…

そして三章で復讐に決着がつきます。復讐は何も生まず少女は自らが裁かれる立場になり、美しいジャンヌダルクのまま物語は終わるのか…と思いきやそうはならないところにこの作品の救いを見ました。

決して明るい話ではないです。ただページをめくる手が止まらない狂気と最後の救いにやられてしまいました…極上の読書体験でした。名作です。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

君を狂気と呼ぶのなら



著者

東崎惟子



レーベル

新潮文庫nex


ISBN

978-4-10-180319-7






どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは和田正雪さんの

「特定しないでください」

です!
※ネタバレはないつもりですが、ミステリなので未読の方はご注意ください
img_9784094075106

☆感想☆

無名の新人作家である《私》は本業の小説ではなかなか日の目を見ず、知り合いからもらう仕事で食いつないでいた。そんなある日、とあるアイドルの行方調査の依頼が舞い込んでくる。それは解散したとあるアイドルグループに人殺しがいるという噂の真相を確かめてほしい、というものだった。私は調査の過程と結果を小説にする、という条件の元で調査をすることに。調査を進めていくうちにとあるアイドルに起こった事件の真相が次々と明らかになり…とこんな感じです!

和田正雪さんの新作!「夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない」「嘘つきは同じ顔をしている」とデビュー作、デビュー2作目とどちらも面白かったので今作も楽しみにしてました!前作まではホラーメインなお話でしたが、今回はどちらかといえばミステリメインないお話として楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は無名の新人作家にとあるアイドルの調査依頼が舞い込むところから始まります。作家としてはまったく売れず知り合いからもらった仕事で食いつなぐ日々。そんな《私》にメランコリック・フルールというグループに所属するアイドルの調査依頼が…なんと殺人をしたメンバーがいるかもしれないので調べてほしいという。序盤から掴みはばっちりでしたね。

そして《私》は小説のネタになるからとそのアイドルの調査を始めます。アイドルのことがバレないように本にする、という約束を取り付け、編集者と共にメランコリック・フルールのファンや事務所のマネージャー、同じグループに所属するアイドルなど少しずつ事件の真相に迫っていきます。インタビュー形式というか、モキュメンタリー形式で進んでいくのが非常によかったですね!

そして何より本文のデザインがすごく良いです。アイドルの写真やSNS上のやりとりなどを彷彿とさせるデザインを挟みながら物語が進んでいくので、《私》の調査過程を追体験できるような仕掛けになっているのがグッドですね。アイドルの写真は実在するアイドルの写真を使っているのでなおのこと臨場感がありました。

ミステリとしても面白いのですが、やはり根底にあるのは人の悪意ですね。この悪意がページが進むごとに確かに感じられるようになるのが面白かったです。整形ってそういう理由でもするんだ、であったりとか裏垢の使い方とか…ピリピリする人の悪意が良きです。

サクサク読めて満足度の高いミステリでした。著者の新境地を存分に味わうことができたので、次回作以降も楽しみですね。新作待ってます!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

特定しないでください



著者

和田正雪



レーベル

小学館文庫


ISBN

978-4-09-407510-6

表紙画像のリンク先




↑このページのトップヘ