カテゴリ: SF

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは人間六度さんの

「烙印の名はヒト」

です!
img_ 9784152104137

☆感想☆

介護施設で働くケアロボットのヒト型アンドロイドのラブ。彼女は施設入居者であるカーラ・ローデリック博士に依頼され彼女を絞殺してしまう。人を殺すことができないはずのロボットが人を殺す。その汚名を返上するためにラブは追手から逃げることに。ロボットを人間と同様に扱うことを求める人々やロボット排斥論者との戦いの果てにラブは何を思うのか…

人間六度さんの新作!いまだにデビュー作の「スター・シェイカー」積んでます!すみません!今作はハイスピードが逃走劇&バトルとロボット三原則的な側面からのロボットへのアプローチが魅力のSFでした。面白かったです!

物語は介護施設でケアロボットとして働くラブが人を殺してしまうところから始まります。介護施設でケアロボットとして働くラブ。そんな彼女はロボットは人を殺せないという制約を破って入居者のカーラを殺してしまいます。SFは入りが硬い作品が多いですが、流石の人間六度さん。すっと物語に入っていける序盤は見事の一言です。ケアロボットの設定もよかったですね!

人を殺してしまったことで無期懲役の判決を下されるラブ。しかし人権を持たないウエイツというロボットであること、人を殺すようにデザインされていないはずのロボットが人間を殺してしまったこと。そのことに疑問をもち汚名を返上するためにラブは逃亡します。

ここからはスピード感あふれる逃亡劇とバトルが続いていきます!自分がなぜ人を殺したのか。様々な人と出会い己に問うラブ。介護施設にいる頃からラブのことを特別に想っていた同じくロボットのマーシー。傭兵のアイザック・コナー、人間とロボットの絡みが大好きなスラッシャー…個性的で魅力的なキャラが繰り広げる会話劇も魅力的でした。

ロボットであるラブが自覚する自我<メタ>やロボットたちが持つ心象風景、何をすればロボットは人間になり、何を保てば人間に近づくのか。ページが進むごとに明らかになっていく過程もよかったですね。ロボットに対する作者の解釈を存分に楽しめるのがSFの魅力だと改めて気付かされました。

終盤に差し掛かったあたりの超ド級なバトルシーンとラストはとても印象的でした。500pとかなり分厚いですがその厚みを感じさせないテンポが良いSF作品でした!値段もそれなりですが、それに見合う面白さです!気になった方は!


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

烙印の名はヒト



著者

人間六度



レーベル

早川書房


ISBN

978-4-15-210413-7

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは作者名さんの

「妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom―」

です!
img_ 9784049162301

☆感想☆

ストーリー A
内容は、物理学をひっくり返す現象である現象妖精(フェアリー)。少女の姿で具現化する彼女たちによって人々の生活は豊かになったが、七年前の現象妖精災害によって日本はほぼ崩壊してしまう。崩壊から復興した街・神戸で暮らすカナエは自身の契約した妖精に問題を抱えながらも平穏に生活していた。そんなあるひ、妖精の助けを呼ぶ声に導かれてエルウェシィと呼ばれる妖精に出会う。なんと彼女は現象妖精災害で東京を氷づけにした妖精本人だという。研究施設から逃げ出した彼女を助けたカナエは神戸の街を駆け巡りエルウェシィを殺そうとする追ってから逃げることになるが…とこんな感じです!

〜妖精の女の子を助けろ〜

第31回電撃小説大賞大賞受賞作!受賞後に作者の電磁幽体さんが亡くなられて刊行が危ぶまれていた時期もありましたが、なんとか出版できたようで…関係者の方々に頭が下がります…色々気になるところはあるものの、大賞を取るにふさわしい作品だと思いました。面白かったです!

まず大前提なのですが、かなり荒いなと感じました。作者の電磁幽体さんが亡くなっていて改稿が全然できていないだろうな、ということがどこか伝わる作品です。特に構成的な部分は「このシーンこんなにページ数いるのか?」「このシーンもう少しページ数欲しいな」という箇所が個人的には複数箇所ありました。文章も読みにくいということはないですが、すごく読みやすいという感じではないと思いました。

とはいえ、大賞を受賞する作品。やはり自力がものすごくあって、ガンガン読ませてくれます。

物語はカナエの日常から始まります。現象妖精災害によって重力が反転しながらも復興した街・神戸。普通の学生として生活するものの、妖精の言葉がわかるというカナエにしかない特殊な能力、そしてカナエが契約する妖精であるレヴィがなんの力も持たないということで学校ではどこか生きづらさを感じている…序盤から割と設定フルスロットルでしたが物語への引力はすごかったですね。

そしてカナエはエルウェシィに出逢います。東京を氷づけにし1500万人の命を奪った現象妖精災害。その災害を引き起こした張本人である彼女を助けます。最初はカナエのことを拒絶するエルウェシィですが、カナエの妖精と話せるという特殊能力で心を通わせる過程が良かったですね!

しかし災害を起こしたエルウェシィが逃げ出したことで彼女を狙って追ってが迫ります。カナエたちは重力の反転した神戸を舞台に追手から逃げ続けます。途中のバトル描写は作者が描きたかったバトルシーンをこれでもか!と盛り込んだ内容で楽しく読めました!

終盤は追手との最終決戦。エルウェシィの氷の能力を生かしたバトルとスケールの大きな戦闘シーンは最高でしたね!最後まで楽しく読ませていただきました!

キャラ A
カナエは最初は普通の男の子かな?と思いましたが、徐々にレヴィやエルウェシィを守頼り甲斐のある姿を見せてくれるようになって物語の中で頼れる主人公に成長していました!

エルウェシィはさいしょは神秘的で儚げな印象を受けましたが、物語が進むに連れて人間の女の子らしいところをたくさん見せてくれるようになりましたね!可愛かったです!

最後に
電撃小説大賞の大賞受賞作として楽しく読ませていただきました!もっとブラッシュアップされていれば、続きが読めれば…など思うところはありますが個人的には大満足でした。

どんな人にオススメか?
SF世界観なボーイミーツガールな逃避行が読みたい方は!この作品にまつわるエピソードから過度な期待をしない方が楽しめるのではないかと個人的には思います。とはいえ電撃小説大賞の大賞受賞作。やはり面白いです。気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom―



著者

電磁幽体



レーベル

電撃文庫


ISBN

978-4-04-916230-1

表紙画像のリンク先



どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは畑リンタロウさんの

「プロジェクト・ニル 灰に呑まれた世界の終わり、或いは少女を救う物語」

です!
img_ 9784815628277

☆感想☆

ストーリー A
内容は、300年前に灰と呼ばれる死の原因となる物質に覆われた世界。人類はわずかに残された土地と空で暮らしていた。第六都市に暮らす技師のマガミは墜落しかけていた謎の飛行船・メンシス号を助ける。しかし勝手に飛行船を助けてしまったことでマガミは都市を追放されてしまう。そんなマガミを飛行船に乗るニルが助け、マガミは飛行船の整備員として働くことに。整備員として働く中でマガミは飛行船やニルに隠された真実を知ることになるが…とこんな感じです!

〜この世界は灰に包まれている〜

畑リンタロウさんの新作!第16回GA文庫大賞銀賞受賞作ですね。畑リンタロウさんは「汝、わが騎士として」で第30回電撃小説大賞の選考員奨励賞を受賞しているので2レーベルで新人賞を受賞されていますね。今作はかなり重厚な骨子がしっかりとしてSFとして楽しく読ませていただきました!面白かったです!

まず序盤。マガミがニルに誘われてメンシス号に乗船するところから物語は始まります!灰に覆われた世界、わずかな陸地で平穏に暮らす人々。そんな人々を繋ぐ灰の上を飛ぶ飛行船…ワクワクする設定が序盤から盛りだくさんでしたね!都市のルールで不明な飛行船を寄港させてはいけないというルールを破ってしまったマガミ。そんな彼は都市を追放されてニルに誘われて彼が助けた飛行船メンシス号に乗ることになります。

ここからはかなりスローペースで物語は展開されていきます。飛行船が動く原理や目に見える飛行船を動かすための犠牲。そしてニルという特別な存在の少女…少しずつメンシス号やニルに関する秘密が明かされていきます。SFとしてみると重厚でいいなと思う一方、個人的にはもう少しエンタメに振ってもいいのかな?と思うシーンの連続でした。(ラノベなので…)

そして物語はニルがとあるプロジェクトの重要人物であることが明かされ、メンシス号の目的が明らかになりはじめるあたりから一気に動き出します!ここからは物語が一気に盛り上がっていっていきましたね!蘇るマガミの記憶、そして灰に隠れるクジラの存在と怒涛の展開…この後半の盛り上がり方は大好きです!


ラストシーンもよかったですし最後まで楽しく読ませていただきました!

キャラ A
マガミは後半の記憶を取り戻してからの泥臭い感じのかっこよさがよかったですね!ニルも最初の超人然とした姿から人間らしい感情や行動を見せてくれる後半のギャップがグッドでした!

最後に
重厚なSFラノベとして楽しく読ませていただきました!1巻だけでも十分に面白いですが、続刊でどんどん面白さが増していくタイプの作品と個人的には思いました。

どんな人にオススメか?
重厚なSFが読みたい方は!終末みを感じる世界を舞台に世界を揺るがす物語が展開されていく過程が良きです!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

プロジェクト・ニル 灰に呑まれた世界の終わり、或いは少女を救う物語



著者

畑リンタロウ



レーベル

GA文庫


ISBN

978-4-8156-2827-7

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは人間六度さんの

「推しはまだ生きているか」

です!
img_ 9784087718713

☆感想☆

人間六度さんの新作!人間六度さんの作品は好きなんですけど、なかなかタイミングがなくていくつか積んでしまってます…すみません…今作は小説すばるに掲載された短編を5作品収めた短編集となっています!以下それぞれの作品についての感想です!

サステナート314
超サステナブルな宇宙船で自殺してしまった友達・マドカの最後の願いを叶えるために宇宙船内を旅する作品。最愛の親友であるマドカを失ってしまったリンネ。死んだら全てが資源になるサステナブルな都市で彼女を養分にさせないために、彼女の最後の願いを叶えるために広大な宇宙を旅する。肉体的には死んでしまっているものの、ロボットに意識があるという不思議な状態のマドカとの会話は楽しいですし、これは百合だと思います(メガネくいっ)。結末も印象的でしたし短編集のはじまりとしてこれ以上ない作品でしたね!

推しはまだ生きているか
荒廃した東京で自給自足の過酷なシェルター暮らしを送るあみぱん。彼女は唯一の救いである推しの節目おわたの配信だけを希望に生きていたが、ある日突然おわたの配信が止まってしまう。彼がまだ生きているのか、そもそも存在しているのか。凸ることを決意したあみぱんは彼がいるはずの渋谷クレバスに向かうが、道中で同担拒否のおわた推しのたーつんと出会い一緒におわたの元に凸ることになるが…
表題作。これが1番好きでしたね。荒廃した終末世界感漂う東京。推しの配信が文字通り救いなあみぱんが、推しに凸るために荒廃した東京を旅する。凸という配信文化ではタブーをこういう終末もので描いて、しかも同担拒否のオタク女子と一緒に旅をする…これも百合だと思います(メガネくいっ)。配信者の描き方は流石の人間六度さんで抜群に良い見せ方してくれますし、こういう結末に持っていくのか!という衝撃も凄まじかったです。この作品だけはとにかく読んでほしい。インパクトが凄まじい作品でした!

完全努力主義社会
全ての努力が数値化されたディストピアで人類の敵であるM&Mと戦うお話。機動外装という兵器を身に纏って戦うというロボットものっぽさは好きなんですけどイマイチピンとこなかった作品でもあるんですよね…面白いのはわかるんですけど…単純にこの作品とは合わなかったと思います…

君のための淘汰
婚活女子の藍子が意思疎通可能な寄生生物に寄生されてしまう。時同じくして年収一千万円のイケメンとマッチングするが…
唯一現代日本が舞台のお話。会話?念話?ができる寄生生物とのやりとりはコミカルで楽しいですし、寄生生物が地雷男を見抜いて藍子にアドバイスするやりとりが楽しい!婚活のあるある?的な要素と急展開からのこの作品らしい?ラストが印象的でしたね!僕は哲人くん好きですw

福祉兵器309
人が老いると老骸という化け物に変わってしまう王球という惑星。そこで老骸を殲滅するためにたたかう円狗が理叫という少女と出会い、彼女のクロージングプランに付き合うことに…
すごく皮肉が効いたSF短編。人が年老いたら老骸(老害)になるとか、老骸を倒すときのセリフが「福祉実行」だったり老人憎し!をスタイリッシュに描いてその皮肉を覆い隠す感じが好きです!ラストの展開もすごく好きです!

以上になります!個人的には「サステナート314」「推しはまだ生きているか」がめちゃくちゃ好きでしたね!とはいえ他の短編も面白いですし、SF好きにはぜひ勧めたい作品です!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

推しはまだ生きているか



著者

人間六度



レーベル

集英社


ISBN

978-4-08-771871-3

表紙画像のリンク先


どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのはアンナ・カヴァン著、山田和子訳の

「氷」

です!
img_ 9784480432506

☆感想☆

氷河期が近づく地球。そこで1人の少女を追う私がいた。姿を消した少女を探して車を駆り、船に乗り、ひたすらに少女を追い求める私。そんな私は旅路の中で長官という少女を追うヒントとなる人物に出会う。果たして私は少女と再び出会うことができるのか…

アンナ・カヴァンの名作長編小説。アンナ・カヴァンの作品は短編は読んだことがあったのですが、長編は今作が初めてです。というかイギリス文学の長編を読むのが初めてです。ずっと露文ばかり読んでいたので…本作を読むきっかけになったのは漫画「バーナード嬢曰く。」の3巻で「氷」が登場して興味を引かれたからです。ジャンルはSFと言って良いのか…氷河期が迫り来る世界でひたすらに少女を追う言葉にし難い魅力のある作品でした。面白かったです。

物語は主人公の<私>が少女を追うシーンから始まります。私は少女と過去に関わりがあった、少女は恐らくアルビノである、少女は結婚している、私という人物はそれなりに社会的な立場や権力がある人間である。そうしたことが断片的に開示されながら物語は進んでいきます。

物語の大半は現実かそれとも私が見る夢なのかわからない文章の連続で進んでいきます。現実かそれとも私が見る夢か妄想かはたまた幻想か…そうした何が事実で何が現実かわからない文章の中で物語は進んでいくので読み味はかなり特殊です。しかも文字密度も高いのでスラスラと読むことができません。しかしそうした読づらさと夢現な文章こそがこの物語の魅力なのだと読み進めるうちに気付かされていきます。

物語が大きく動くのは私が長官と呼ばれる存在に出会った後になります。少女の存在を知る長官という人物。彼からなんとかして少女を手に入れようともがき、少女を目の前にしてもまたもがき、迫り来る氷河期を前にあまりにも無力な自分を嘆く。私の感情に次第に心動かされていきます。

終盤で私が選んだいくつもの選択肢や、最後のシーンはこの作品でしか味わえないものでした。決して読みやすい作品ではない。明るい話でもない。しかし心に残るものがある。そんな作品です。気になった方はぜひご一読ください。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル




著者

アンナ・カヴァン

山田和子



レーベル

ちくま文庫


ISBN

978-4-480-43250-6

表紙画像のリンク先



↑このページのトップヘ