カテゴリ: ミステリ・サスペンス

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは入夏紫音さんの

「古川くんと二ノ瀬さん 七草寮青春推理譚」

です!
⚠︎ネタバレはないつもりですがミステリなので気になる方は既読後にお読みください。
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☆感想☆

学生寮・七草寮で暮らす古川景夏と二ノ瀬あかる。気が合う2人は何かと一緒に行動を共にしていた。しかし好奇心旺盛な二ノ瀬に巻き込まれて古川は学校やその周辺の謎に遭遇することに。盗まれた二ノ瀬の傘の行方、死んだはずの生徒の名前が記された創部届、吹奏楽部の部長のタオルを盗んだ犯人、七草寮に残されたタイムカプセルのパスワード、そしてダーツ同好会の謎・・・2人はどんな謎を解決していくのか・・・

第23回『このミステリーがすごい!』大賞隠し球作品。学校をメインの舞台にした人が死なないミステリとして楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は連作短編形式で進んでいきます。各話50p〜70p前後で謎解きがされていきます。イケメン?で頭が切れる古川くんと好奇心旺盛で美少女の二ノ瀬さん。探偵役の古川くんと助手役の二ノ瀬さん。2人のやりとりは見ていて楽しいです。

ミステリとしては人が死なないミステリ&学校を中心に起こるちょっとした事件を解決していくものなので、あっと驚くような謎はないです。しかし古川くんが丁寧に謎を解き明かしていく過程はミステリの面白さをぎゅっと濃縮しています。

学園ミステリ、人が死なないミステリとしての面白さもあるのですが、青春ものとしても魅力的です。二ノ瀬さんが所属する生徒会メンバーたちとのやりとりや、古川くんの腐れ縁である柚月とのやりとり、そして普段は仲良しだけど終盤で関係性に変化を見せる古川くんと二ノ瀬さんの関係性に青春を感じます。

個人的に一番好きだったのは二章のAll eyes on  youというすでに死亡している生徒が申請した部活の創部届の謎を探るお話。謎が明かされていく過程やすでに死亡している生徒にまつわるお話など過去と今がリンクしつつ明かされる謎が良かったです。

青春ミステリ、学園ミステリ、人が死なないミステリとして楽しく読ませていただきました。気になった方はぜひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

古川くんと二ノ瀬さん 七草寮青春推理譚



著者

入夏紫音



レーベル

宝島社文庫


ISBN

978-4-299-06746-3

表紙画像のリンク先


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さて、今回感想を書いていくのは東崎惟子さんの

「美澄真白の正なる殺人」

です!
⚠︎ネタバレありです。
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☆感想☆

9歳の頃に一緒に遊んでいた親友・紫音を突如として離れ離れになってしまった真白。高校生になった彼女は刑事になるという目標のために日々自分の正義を信じて正しく生活していた。そんなある日、8年ぶりに紫音と再会することに。最初は親友との再会を喜ぶ真白。しかし彼女の体には虐待と思われる痣が。さらには死んでいるはずの母親が生きていると言い出して…

東崎惟子さんの新作。これまで「竜殺しのブリュンヒルド」「少女星間漂流記」と楽しく拝読させていただいたので新作楽しみにしてました。今作は少女たちの鮮烈な印象を残す百合とサスペンスということでこれまでの作品とは異なるテイストの作品で存分に楽しませていただきました。面白かったです。

序盤では幼き日の真白と紫音が仲良くなる過程が描かれていきます。長崎の隠れキリシタンを舞台にした街というのがいいですね。最初は微笑ましく見守っていた2人のやりとりが、衝撃的な展開に変わる瞬間が印象的でしたね。雨の日にあんな出来事があって親に夢だよとか言われたら決して忘れないと思います。

そして物語の時間は進み真白が高校生に。正義の味方として日々「正しく」生活する真白。そんな彼女はかつて衝撃的な別れ方をした紫音と再会します。紫音に再会できたことを無邪気に喜ぶのも束の間、彼女の体に痣があったり、死んでいるはずの母親がいると言い出したり…序盤の恐怖は瞬間的なものでしたが、ここからは静かな恐怖が感じられますね…

紫音を虐待している彼女の父親を、正当防衛気味とはいえ殺してしまった真白。とはいえ凶器が凶器だけに罪に問われれば有罪は確定。そんな真白と紫音が導き出した答えは殺してしまった紫音の父親をバラバラに切り刻んで<なかったことにしてしまう>こと。女子高生2人による罪の共有は百合の波動を感じるとともに、自分の正義や自分の親友のために誰かをバラバラにすることができる2人にサイコパスを感じます。

真白の計画を持って紫音の父親を完璧に処理した2人。父親から解放され、罪の意識がありながらも、自由に暮らす2人。しかし真白のしていることに刑事である父親と彼女の腐れ縁である潤は気づき初めていて…それでも完璧な真白がのらりくらりとかわしていく様子は圧巻でした。

終盤ではついに罪を隠しきれなくなった真白が…いやこのラストは本当にすごいです。最初の1ページでどういう結末が待ち構えているのか知っているとはいえ…言葉が出ない。頭をブン殴られました。これは、ちょっとすごい作品を読んでしまったかもしれません。

女子高生同士の百合のサスペンス。最後までとことん楽しませていただきました。個人的には超名作です。気になった方はぜひご一読を

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

美澄真白の正なる殺人



著者

東崎惟子



レーベル

新潮文庫nex


ISBN

978-4-10-180301-2

表紙画像のリンク先


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さて、今回感想を書いていくのは松村涼哉さんの

「少年殉教者」

です!
⚠︎若干ネタバレありです
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☆感想☆

人気絶頂の中「オレは、ルールの下に死んでいく」というメッセージを残し自ら命を絶った俳優のSIN。そんな彼の生き様、死に方に影響を受けて多くの若者が自殺を試みるという社会問題が発生していた。そんな中、甘味と自殺スポットを紹介するという動画投稿チャンネルを運営する詠歌にとあるDMが届く。なんと彼女の投稿した動画に自殺当日のSINが映っているというものだった。たった4秒間の手がかりを元に詠歌と彼女に連絡をした少年・翔はSINの自殺の謎に迫ることになるが…

松村涼哉さんの新作。個人的には「監獄に生きる君たちへ」依頼ですね。松村さんの作品は好きなのですが。やはり少年少女のクライムサスペンスというものは疲れきった社会人には重く…読むのが久しぶりとなってしまいました。今作は自殺した大人気俳優の自殺の謎を追うクライムサスペンスとして楽しく読ませていただきました。面白かったです。

まず序盤。詠歌の動画に自殺当日のSINが映っていることが発覚するシーンから物語は始まります。友人の自殺未遂を機に自殺スポットと甘味を紹介する動画チャンネルを始めた詠歌。そんな彼女が投稿した動画に自殺当日のSINが映っていると言いDMを送ってきた少年がいて…序盤からなかなかのハードさを感じさせる展開ですが、詠歌のピンチを助ける翔は魅力的でしたね。

そして始まるSINの調査。たった4秒間だけ映ったSINの動画をキーに詠歌と翔はSINに関係深い人たちを尋ね回ります。SINが通っていた協会、彼が所属していた事務所…2人の調査で徐々に見えてくるSINの人柄や掴めない感じに引き込まれていきます。

中盤からは物語の色がガラリと変わっていきます。翔の正体が明らかになり、そしてSINとの過去が明らかになっていく…虐待、闇バイト、裏社会、暴露系配信者…松村さんらしく、そして現実でも度々話題となるワードの解像度の高さは流石の一言です。

終盤の翔の行動理由は印象的でしたし、SINの死を誰よりも特別に思っているからこそ彼を時差tの象徴にしたくないという翔の想いが胸を打ちます。

決して明るい物語ではないのですが、サクサクと読めますし翔や詠歌の思いが印象的な作品です。松村さんの作品初挑戦にもぴったりかと思います。気になった方はぜひ

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

少年殉教者



著者

松村涼哉



レーベル

メディアワークス文庫


ISBN

978-4-04-916320-9

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さて、今回感想を書いていくのは湊かなえさんの

「Nのために」

です!
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☆感想☆

超高速マンションスカイローズガーデンの一室で野口夫妻の変死体が発見される。彼らの死体発見現場に居合わせた杉下希美、成瀬慎司、西崎真人、安藤望の証言でなぜ野口夫妻が殺されたのか明らかになっていく。4人がNに寄せる思いはいったいどのようなものなのか…

湊かなえさんの作品。個人的には中学生?高校生?の頃に読んだ「告白」以来の湊かなえさんの作品で、湊かなえさんの作品がどのようなものだったのか。その記憶自体希薄な状態で本作を手にとりました。なんとなく湊かなえさんの作品は読後感が嫌な感じ、というイメージでしたが本作はどういった嫌な感じは一切なく愛について考えさせられるお話でした。面白かったです。

物語は5章で構成されます。1章は野口夫妻が殺害された際に事件現場に居合わせた人々の証言、残りの4章で事件現場に居合わせた1人1人の過去から今を描いていきます。本の裏表紙にはミステリーとありますが、野口夫妻の殺害については1章で明確に描かれるためどちらかというとサスペンスよりの印象を受けました。

物語は一つ大きなテーマである愛の描かれ方は印象的でした。罪の共有、暴力をする/されることでしか感じない愛、西崎が書いた小説「灼熱バード」、杉下が出身の島で受けた屈辱…作中、様々な形で見せられる愛はページをめくるたびに考えさせられます。彼らが言っている愛は本当に愛なのか、形が歪なだけで愛というのか、それとも愛という言葉で醜い人間性を隠しているだけなのか…

特に印象的だったのは杉下が受けた屈辱でした。両親のせいで食べることにすら困ることになり、精神的にも肉体的にも限界の中で、唯一信頼できる人に送ったメッセージ…決して明るいシーンではないのですが、杉下が守ろうとしたもの、守れななかったものは読んでいてじわじわと効いてきます。

湊かなえさんという作家からイメージされる物語とはまた異なる物語と感じました。十数年ぶりの湊かなえ作品でしたが読んでよかったです。愛について考えさせられる作品です。気になった方はぜひ。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

Nのために



著者

湊かなえ



レーベル

双葉文庫


ISBN

978-4-575-51704-0

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さて、今回感想を書いていくのは杉井光さんの

「世界でいちばん透きとおった物語2」

です!
⚠︎ネタバレはしないつもりですが、ミステリなので未読のかたはご注意ください。
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前巻の記事



☆感想☆

新人作家の藤阪燈真は自身の体験を元に上梓した「世界でいちばん透きとおった物語」が長編1作目にしてヒットし知る人ぞ知る作家になっていた。しかし長編2作目がなかなか書けずに苦労していた。そんな彼の元にとある依頼が舞い込む。それはコンビ作家・翠川双輔のプロット担当である菊谷が死去したため未完となっている「殺導線の少女」の解決編を探って欲しいという依頼だった。藤阪が解決編を追うなかで驚愕の真実が明らかになるが…

この感想を読みにきた方ならご存知「世界でいちばん透きとおった物語」の続編。まさか続編がでるのかという驚きと、ただヒットしたから無理やり続編を出したのではないかという疑念で読む前はどうなんだ?と思っていました。しかしミステリとしても人間ドラマとしてもあまりにも完成度が高く流石の杉井光さんといった作品でした。2巻の方が好きという方がいても全くおかしくない、というか仕掛け部分を除けば僕は2巻の方が好きです。最高の作品でした。

まず序盤。なかなか2作目が書けずにいる藤阪が描かれます。1巻で知ってたとはいえ、こういう形で2巻が描かれるのはなんか感慨深いですね…何者でもなかった藤阪が作家になって推理作家協会を手伝っている。長編2作目に苦労している。彼の感じる全てが新鮮で鮮烈な印象を覚えます。

そして物語はコンビ作家・翠川双輔の片割れであるプロット担当の菊谷が死去したことをきっかけに未完となった「殺導線の少女」の解決編を探って欲しいというお話を軸に進んでいきます。ミステリ専門誌で連載されていたが故に、執筆担当である宇津木すらその後の展開がわからない。そんな謎に藤阪が挑むことになります。

連載されていた「殺導線の少女」がそのまま読める構成なのが憎いですね。この物語のどこに謎があるのか考えてしまいます。敏腕編集の霧子さんが藤阪が関係者から聞いてきた証言を元に謎の糸口を見つけ、解決していく過程が見事です。

ミステリ部分についてはやはり杉井光さんというか「神様のメモ帳」を彷彿とさせるようなもので、個人的にはこれが大好きでした。1巻で見せた仕掛けも好きですけど、杉井光さんの本領はこっちですよね。古の杉井光ファンとして後方彼氏面しています。

ラストも素晴らしいですし、あの1巻からこの2巻が出るなら誰もが満足すると思います。「世界でいちばん透きとおった物語」はまだ続けられますし、不朽の名作になります。太鼓判。1巻で満足せずに2巻も読んでほしいです。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

世界でいちばん透きとおった物語2



著者

杉井光



レーベル

新潮文庫nex


ISBN

978-4-10-180300-5

表紙画像のリンク先


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