カテゴリ: ミステリ・サスペンス

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは浅白深也さんの「アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を 1」です!
⚠︎致命的なネタバレはないですが、ミステリなので未読の方はご注意ください。
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ストーリー A
内容は、主人公募集という怪しい言葉に惹かれ謎のバイトに募集した平凡な高校生輝馬。彼は雇い主の不思議な女性・霧ヶ峰絵色から仕事の内容を聞く。それはアンフィニシュトの書という読んだ人間を物語の中に誘う本でヒロインをハッピーエンドに導くというものだった。早速本の世界に入る輝馬だが、物語は3日目にしてヒロインが惨殺されるという結末を迎える。輝馬は再び本の世界へと向かうが果たしてヒロインをハッピーエンドに導くことができるのか…とこんな感じです!

〜物語なかのヒロインを救え〜
初挑戦の浅白深也さんの作品!電撃の新文芸から
デビューされた作家さんですね。序盤はファンタジックなまるでフェアリーテイルのような雰囲気がありましたが、ヒロインの女の子が殺されるところからガラリと色を変えループ×ミステリの顔を覗かせてきましたね…結末は賛否あると思いますが個人的には面白かったです!
平凡な高校生輝馬は主人公募集という怪しいバイト募集が気になりそのバイトに応募します。雇い主の元へいくとそこには不思議な(というか傍若無人な)女性・霧ヶ峰絵色が。彼女からアンフィニシュトの書という物語の中に入れる不思議な本の世界に入り、ヒロインをハッピーエンドに導いて欲しいとたのまれ…最初の見開き1ページ、挿絵と文章が一体となっているページがアンフィニシュトの書の1ページ目というのはいい演出でしたね!いたって平凡な輝馬の日常と、主人公募集という謎のバイトの非日常感もグッドでした!絵色さんはぶっ飛んでますね…この人の時任さんは苦労してそうです…そして輝馬は物語の中のヒロインを救うためにアンフィニシュトの書のなかへ。そこでアリアというパン屋の少女と出会い成り行きから彼女のパン屋を手伝うことになります。ここからはファンタジーとお伽話のような優しくて明るくてアリアとの何気ないやりとりが楽しい日常が描かれます。しかしそれはアリアの死という形で終わりを迎えます。ここからはループものとミステリががっつりと顔を覗かせます。アリアを救うために何度も物語の中に向かう輝馬。しかしなん度も失敗してはアリアを始めとして物語の登場人物が殺されときには自分も殺された…精神をすり減らしながら物語の中で出会ったただの登場人物ではないアリアのために奮闘します。そして明らかになるアリアを殺す犯人というか事件の全貌。うん。確かに伏線はありましたね。これは気付けませんでした。でも事件の全貌がわかってもそれで終わりではなくて物語の終わりがあって…この物語の結末は個人的には好きなんですけどね…ファンタジー×ミステリ×ループものがまさに三位一体で組み合わさった作品でした!面白かったです!

キャラ A
輝馬は本当に普通の男の子なんですけど、物語の中で
アリアと出会い彼女に惹かれる中でたとえ現実ではなくても本気で彼女を救おうとする姿がすごく純粋でまっすぐでした。アリアはすごく優しくて笑顔が素敵な女の子。街の人の笑顔のためにパンを焼いてでもその裏では…フィクションの中のフィクションのヒロインという立場の女の子なんですけど、妙に魅力あるキャラでしたね…絵色さんはすごい人。輝馬くんがこれからめっちゃ大変な思いをするのが目に見えますw

最後に
ナンバリングされてるってことは続くんですかね?これからもこのテイストで色んな物語を終わりまで導くお話が展開されるならぜひ読みたいです!続刊待ってます!

どんな人にオススメか?
ミステリが読みたい方は!結末は割と賛否が分かれるかもですが、ミステリ好きなら楽しめるかと思います!またファンタジーにミステリにループものとなかなか珍しい要素の組み合わせで読んでいて楽しい作品です!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



アンフィニシュトの書 悲劇の物語に幸せの結末を 1



著者



浅白深也



レーベル



電撃文庫



ISBN



978-4-04-913196-3


表紙の画像は「版元ドットコム」様より


どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは深緑野分さんの「オーブランの少女」です!
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第七回ミステリーズ!新人賞佳作入選作を表題作とした短編集。深緑野分さんのデビュー作です。直近では1944年アメリカのコック兵を描いたミステリ「戦場のコックたち」が第154回直木賞候補作になっていてミステリファンのみならず内外から高い評価を受けている作家さんです。書店でたまたま目にして買ってみましたがすごく面白かったです。ミステリは好きで結構読んでいるのですが、ド肝を抜かれました。以下各短編の簡単な感想です。ネタバレには配慮しますが、ミステリという性質上どこまで配慮できるかはわからないので悪しからず。

オーブランの少女
表題作。前述の通り深緑野分さんのデビュー作です。オーブランという美しい庭の管理人である2人の姉妹が死んだことから始まるミステリ。なぜ彼女たちは死ぬことになったのか。妹の残した日記を元に辿っていきます。ミステリってこんなに面白いんだと初めてミステリを読んだ時の衝撃を思い出す作品でした。過去と今はもちろん、オーブランが秘める忌まわしい過去。そして1人の狂人の存在…本を読んでこんなに面白いと感じたのは本当に久しぶりでした。

仮面
ロンドンで町医者が起こした殺人事件を巡る物語。英国男の欲望を満たしているキャバレー。経営者が亡くなったことで、お気に入りとしていた少女を売り飛ばされたくがないためにとった衝動的かつ計画的な行動。ミステリとしての面白さはもちろん背筋が凍るほどの女たちの狡賢さに背筋が冷たくなりました。

大雨とトマト
作品として見たときは間違いなく「オーブランの少女」が1番面白かったですが、ミステリとして見るなら本作。寂れた街の食堂。そんな場所に大雨の日にやってきたひとりの少女。彼女の放った「父親を探している」というセリフが店主に後ろめたい過去を思い出させ…最後の一行で文字通り戦慄しました。少女が食堂を出て行くときに店主の質問にどうしてあんな風に答えられたのか…伏線が全てわかって最後の一行で集約された瞬間の衝撃がただ最高です。

片思い
昭和初期の女学校を舞台にしたお話。ミステリ要素はこの短編集の中では弱かったですが、キャラクターの魅力や時代背景の書き方、リアリティなどは圧倒的にこの作品が1番でした。女学校で同室の環が気になる大柄な女学生・薫子。彼女はある日、環のおかしな点に気付いてしまい…ラストシーンは感動的で恋の熱をリアルな感触で味わえました。

氷の皇国
かなりファンタジーよりの作品。小さな漁村に流れ着いた一つの古い死体を巡り、村人たちが推理大会をしていると吟遊詩人が過去に起こった皇国のことを語り出し…濃厚な人間関係が産むドラマティックなミステリでした。恨み憎しみそして愛情。なぜこの登場人物がこの行動を取ったのか。その背景がすごく良かったです。最後にこの作品が来ることで短編集として調和を感じることができるような。そんな作品でした。

以上になります。
少女(たち)を題材にした5つの短編はどれも甲乙つけがたいほど素晴らしいですが、個人的には「オーブランの少女」「大雨とトマト」がお気に入りでした。気になった方はぜひよんでみてください。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



オーブランの少女



著者



深緑野分



レーベル



創元推理文庫



ISBN



978-4-488-45311-4


表紙の画像は「版元ドットコム」様より



どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは松村涼哉さんの「僕が僕をやめる日」です!
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家庭の事情から社会の底辺に近い劣悪な環境に追いやられていた立井潤貴。自殺寸前まで追い込まれた彼を救ったのは高木健介と名乗る少年だった。彼は衣食住を提供する代わりに高木健介として生きるように立井に命じる。高木健介の代わりとして大学に通い充実した毎日を送る立井。しかしそんな日常も高木健介の失踪と共に幕を閉じる。高木がいないことに戸惑うことも束の間、警察から立井が高木として殺人の疑いをかけられていることを知る。果たして高木は何者なのか、そして明かされる高木の過去とは…

松村涼哉さんの最新作。読むのが遅くなってしまいました。松村涼哉さんの作品はデビュー作から追っていて、前作がこれまでの作品と異なる面白さがあったので今作でもそのような面白さを期待していました。そしてそれを遥かに上回る面白さがありました。

父の起こした事故がきっかけで転落人生の果てに社会の底辺層まで落ちた立井。八畳一間に4人で生活をし生活保護費をピンハネされ、貰える食事はわずかで風呂も2日に一回。さらに腰を悪くしたせいで満足に働くこともできない…そんな彼が自殺を考えた時、高木健介と名乗る1人の少年に出会い運命が変わっていきます。

高木に頼まれて高木健介として大学に通い、彼を演じることになった立井。生活保護を受けていたような時代とは大違いで、満足に食べれて腰の治療もできて、大学の生活も努力して馴染んでいって…高木が自分を身代わりに使うのは彼が書く小説のためだと信じて生活を続けます。その間、高木は本を読みひたすら小説を書きます。彼の小説は文壇で認められていて、執筆のために立井に代役を頼んでいたのです。表向きは。

そしてそんな生活が2年経とうとした頃、高木は失踪します。そして警察によって高木健介が殺人容疑にかけられていることを知ります。アリバイがあったことでなんとか難を逃れるも、高木は帰ってこないまま。立井は高木を探すことを決意します。

調査の中でゆっくりと明かになっていく高木の過去。彼の送ってきた人生と吉田真衣という1人の少女の存在。高木の小説に残されたメッセージを読み解いていきながら、立井は高木を追います。道中で明かになっていく高木の過去は立井よりも悲惨で、無戸籍時のどうしようもない閉塞感と絶望を見事に描写していました。

そして全てが明らかになる直前の高木が書いた小説のシーンで、あぁ人はこんなにも文章で心を動かされるんだと小説を読んで久しぶりに感じました。そしてどれだけ貧困でも苦しくても手放せないスマホが妙なリアリティを帯びていました。

結末は誰にどんなものをもたらしたのか想像することでまた深みが増すと感じました。鎮魂と祈りが存在しない登場人物の、想像の世界のあの世にこれほど届けと願うことはこれからの人生でなかなかないでしょう。素晴らしく面白い作品でした。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



僕が僕をやめる日



著者



松村涼哉



レーベル



メディアワークス文庫



ISBN



978-4-04-912860-4


表紙の画像は「版元ドットコム」様より

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています。

さて、今回紹介するのは似鳥鶏さんの「理由あって冬に出る」です!
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芸術棟と呼ばれる文化系の部活が集まる場所。美術部に所属する葉山はある日、芸術棟にフルートを吹く幽霊がいるという噂を聞く。怖くて送別会に向けた練習を行えないという吹奏楽部の要望の元、葉山は夜の芸術棟へ。まさか幽霊などいないと思っていた葉山だが予想に反して幽霊が現れる。葉山は伊神と共ににわか高校生探偵団として事件の解決に乗り出すが…

似鳥鶏さんのデビュー作。前々からずっと読もう読もうと思っていて、気づいたら高校生が終わり、大学生が終わり社会人になってしまいました…ですが、社会人になった今、こうして葉山たちの等身大の学園ミステリを読むことができてある意味良かったのかもしれません。

⚠︎ネタバレには配慮しますが、ミステリなので未読の方はお気をつけください

物語は意味深なプロローグから始まります。思えばこのプロローグがしっかり伏線となり最後に繋がるのは読んでいてとても気持ちよかったです。

序盤は葉山による某市立高校の実状と芸術棟で騒ぎになっている幽霊について語られます。10年前の作品なので、多少今と違うと感じる部分もありましたが「高校生活」を生で感じられる描写は好きでした。

そして夜の芸術棟で本当に幽霊を見てしまったことで伊神と葉山の2人を中心に「にわか高校生探偵団」の活動が始まります。最初は噂話程度だった夜の芸術棟の謎がどんどん大きくなり、次第に手に負えなくなる様子には驚きました。しかしそうした謎も伊神を中心に丁寧に謎が解けていく過程が描かれます。ミステリの重要な要素の一つである「なぜ?」と「どんな方法で?」がきちんと説明されていて読んでいてとても楽しかったです。また冒頭や作中の地図で登場人物がどのように動いているのか想像できるのもちょっとした探偵気分が味わえ楽しかったです。

立花先輩の部分から終盤にかけてはまるで予想のつかない展開で、特にラストは驚きましたが丁寧な伏線回収と謎解きを最後まで楽しませていただきました。シリーズで続刊もあるので、余裕があれば続きもまた読んでいきます。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

ISBN 978-4-488-47301-3

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています。

さて、今回紹介するのは川澄浩平さんの「探偵は教室にいない」です!
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第28回鮎川哲也賞受賞作。北海道を舞台にした中学生の少年少女たちがメインの安楽椅子探偵の学園ミステリとなっています。先日Twitterで「学園ミステリが読みたい!」とツイートしたらフォロワーさんからオススメされたので早速読んでみましたがとても面白かったです!

物語は中学二年生ながら身長が169センチあることがコンプレックスな海砂真史が幼なじみの鳥飼歩と再会する場面から始まります。バスケ部に所属し活動的な真史とは対照的に引きこもりな歩。しかし幼ない頃から頭がキレる彼は真史からあることを推理してほしいと頼まれます。そして些細な日常で起こるささやかな謎を解決するミステリが始まります!

物語は全4話で構成されていて連作短編形式で進んでいきます。以下4話の簡単な紹介です。

⚠︎ネタバレには配慮していますが、一応ミステリなのでご注意ください。

1話 Love letter from
真史に送られてきたラブレターが誰から出されたものなのか推理するお話。このお話で真史やその友人たち、そして探偵役の歩が紹介されます!学園ミステリ全開!なモチーフに安楽椅子探偵要素がよく絡んでいてめっちゃ面白かったですね!これが読みたかった!というのが1話目から味わえて大満足です!

2話 ピアニストは蚊帳の外
真史の友人の岩瀬京介のあることをやめた理由を推論するお話。これも学園ミステリと青春がぎゅっと詰まっていて大好きですね!もう本当に読みたいお話がどんどん読めます!彼の屈託もそれをした理由もすごく青春含有率高くてそれを知った真史の反応も良かったですね…

3話 バースデイ
真史の友人総士のお話。彼は人気のある男子生徒で彼女もいるのにあることをしてしまい…というのを歩が推論するお話。北海道の日本海側の冬の海を眺められる中学生本当に素敵だと思います!総士はやっぱりなんだかんだで優しくて気遣いができる男の子だということを知れて、真史は本当に友達に恵まれてるのだと思いましたね…

4話 家出少女
真史が父親と喧嘩して家出して、彼女の居場所を歩が探すお話。安楽椅子探偵がこんな行動するのもまた良し!というような魅力がありましたね!歩がどんな顔で推論していたのか、推論しながらの彼の行動を見るとニヤニヤと想像できてしまいますねw このお話も好きでした!

以上4話の簡単な紹介です!
とにかく学園ミステリを読みたかったので「これ!これが読みたかった!」というお話が1話、2話と読めて大満足でした!もちろん3話、4話も面白かったですし220pちょっとと短いながら満足度が高かったです!学園ミステリ好きならオススメです!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

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