カテゴリ: ホラー・シリアス

どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは中西鼎さんの

「サクチシノニエ 異端の儀式」

です!
※ネタバレありです
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☆感想☆

ストーリー A
内容は、育ての親である伯父夫婦を失い天涯孤独の身になった川上縫。彼は佐口漸村に移住し児童養護施設である大石ホームに入所することに。そこで彼は夢で何度も見てきた少女・芽璃と出会う。夢と全く同じ姿の少女に出会い戸惑う縫。そんな彼に芽璃はかつて佐口漸村で起きた怪事件について語っていく。繋がりが不明なその事件はサクチシサマという佐口漸村に居つくものによる事件だと言い、そして今年も怪事件は起こるという。変わっていく日常に縫はどうなってしまうのか…とこんな感じです!

〜ずっと二人で〜

中西鼎さんの新作!ガガガ文庫での前作「さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々」がめっちゃ面白かったのでこちらも楽しみにしてました!ただ読むとメンタルやられることは確実だったので読むのにはしばらく時間がかかりました…一般文芸を中心に流行っているホラー系かと思いきやとんでもないメリーバッドエンド(と僕は解釈しました)な作品で、すごく口の中がザラつく読後感で…面白いのは確実なんですけど、言葉にできないものがありました…

まず序盤。縫が佐口漸村に移住してくるところから物語は始まります!両親がおらず育ての親である伯父夫婦も事故で失い高校生にして天涯孤独の身になった縫。そんな彼は児童養護施設・大石ホームがある佐口漸村に移住することになります。序盤は割と夢で会える女の子とのひと夏の物語…的な雰囲気はありましたね。あくまで雰囲気でしたが。

縫はかつての小学校の同級生である水谷緒途と再会し、大石ホームのことや佐口漸村のことを知っていきます。現実での実態は不明ですが…大石ホームやそこで暮らす子どもたちの設定周りはリアリティがありましたね。

そして縫は村外れの神社で夢の中で出会う女の子・芽璃に再会します。どこか奇妙な雰囲気を纏った芽璃に、夢で出会う女の子という彼女に縫は惹かれていきます。二人は奇妙な関係性で交流していきます。芽璃が本格的に登場したことで「あぁ…この作品の行く末は決して綺麗で明るいものではないんだろうな…」と再確認させられていきますね。

縫の過去、佐口漸村で行われるサクチシサマを崇めるお祭り、芽璃を育てたおばあちゃんの存在。そしてサクチシサマ…わからなかったことが、点でしか知らなかったことが徐々につながって実体を持ち始める。その過程がじりじりと恐怖を与えてきますね…

中盤以降、縫が芽璃に捕らえられてからは作品の方向性がグッと変わります。勝手にド田舎の古い風習が残る村の民俗学的ホラーかと思っていたら、まさかこっち方向に進んでいくとは…暗い部屋と薬物で徐々に狂っていく縫とそんな彼をコントロールしていく芽璃。最後は…これはとんでもないメリーバッドエンド作品に出会ってしまいましたね…いや中西さん的にはメリーバッドエンドじゃないかもですけど…すごく口の中がザラつく良くも悪くも印象に残る作品でした。

キャラ A
縫は客観的に見ると被害者ポジションな男の子なんですけど、なんかこう色々思うところはありますよね…彼の脳みそ的には最後の状況は幸福で満たされているのでしょう。芽璃は最初に会ったときからラリってるなーと思ってましたが、縫を捕らえてからの行動はガチでラリってましたね。見た目に反して怖い女の子です…

最後に
良くも悪くも印象的で多分、ここ数年で読んだラノベの中ではトップと言っていい記憶に残る作品でした。これで完結だと思うので、またガガガ文庫でこういう作品だして欲しいですね。

どんな人にオススメか?
ホラーというか、メリーバッドエンド作品が読みたい方は。個人的には良くも悪くも印象に残る作品で人はある程度選ぶと思います。ただこの読後感はこの作品でしか味わえないですし、令和最高のメリーバッドエンド作品だと思います。気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

サクチシノニエ 異端の儀式



著者

中西鼎



レーベル

ガガガ文庫


ISBN

978-4-09-453254-8

表紙画像のリンク先




どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは杉井光さんの

「羊殺しの巫女たち」

です!
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☆感想☆

山に囲まれた早蕨部村。そこでは未年の度に行われる奇妙な祭りがあった。それは未年生まれの12歳の少女たちが巫女として村に繁栄をもたらすという<おひつじ様>を迎えるというものだった。12年前に巫女としておひつじ様を迎えた祥子は再び村に戻ってくる。彼女を含めた6人の巫女との約束を果たすために。村に続く奇祭の真実は? 未年に頻発する謎の怪死事件とは? そしておひつじ様の正体とは…

杉井光さんの新作!「世界でいちばん透きとおった物語」がすっかり有名になってしまい、古の杉井光ファンとしては嬉しいやら「こんなに知られないで!」とめんどくさいファン化したりとちょっと複雑な思いですw
今作はデビュー作の「火目の巫女」や「死図目のイタカ」を彷彿とさせるような雰囲気を纏ったホラーとして楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は12年前と今を行き来しながら進んでいきます。12年前の未年の日、小学校六年生の頃に巫女として<おひつじ様>をお迎えした祥子たち6人の少女。そして12年前の約束を果たすために再び早蕨部村に集まった24歳の祥子たち。二つの視点で辺境の村の異様な繁栄の背景が語られていきます。序盤から村に漂う閉塞感が伝わってきて物語に引き込まれていきます。

12年前は繁栄していたのに、今は見る影もない早蕨部村。その理由は12年前に祥子たちが何かをしたから。では彼女たちは何をしたのか…話の端々に感じる不気味な要素。閉鎖的な辺境の村。村の権力者たちが知る<おひつじ様>の正体とは何か…12年前にその正体を追った6人の少女のお姉ちゃん的ポジションの律子の調査で知っていくという構成も面白かったです。

おひつじ様を迎える祭りや儀式も面白かったですね。祭りの半年前から神楽を覚えたり、希望する家に巫女装束で巡ったり、祭りの前は木の実と水しか口にできなかったり…こういった田舎のお祭りっぽい描写もリアリティがあってよかったです。個人的には村の権力者たちに異様な力があるのも印象的でした。都会生まれとしてはこういう村の権力者たちというのが一番閉塞感を感じますね。

物語は怪死事件が始まってから徐々にスピードをあげていきます。なぜ未年生まれの女の子は巫女になるのか、未年生まれの男児はいないのか。シダの葉を使ったおまじないは何か、なぜ怪死事件ではありえないような死に方をするのか…グロテスクなシーンもありますがスプラッタ的な怖さではなく、本能を刺激するような嫌な感じでページをめくる手が加速していきます。

中盤では6人の少女たちが大人になってから集まり、祭りの日に交わした約束を果たすために行動していきます。この辺りから語られる12年前の記憶はなかなか生々しく結局一番怖いのは人間なのか…とも思ったりもしましたね…個人的には先生が色々不憫でなりません…いい先生っぽいのに…

終盤で判明する事実やエピローグは面白かったですね!杉井光さんに期待したホラーを存分に楽しめることができました。帯にはミステリ、とありますがミステリを期待すると…なのでホラーとして読むのが良いかなと個人的には思いました。ホラーが好きな方にはぜひオススメしたいです。気になった方はぜひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

羊殺しの巫女たち



著者

杉井光



レーベル

角川書店


ISBN

978-4-04-115127-3

表紙画像のリンク先




どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは石川扇さんの

「私の怪談師はポンコツ可愛い 1 怪談収集はデートに含まれますか?」

です!
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☆感想☆

ストーリー A
内容は、幼い頃から霊感体質に悩まされている白春青。彼女は同じクラスの孤高の美少女・夏目咏に突然家に来るように言われる。恐る恐る彼女の家に行ってみるとそこは怪談bar。咏は怪談師という怪談を披露する存在になることを目指していた。しかし彼女のはなしにはリアリティが足らず、霊感があるという青に協力を依頼したいという。2人は怪談を求めて様々な場所に赴くが…とこんな感じです!

〜怪談あるところにこの2人あり!〜

石川扇さんの作品。参加させていただいているHJ文庫公式レビュアープログラムの作品です。ありがとうございます。百合とホラーというあまり見ない組み合わせを存分に楽しませてくれる作品でした。面白かったです!

まず序盤。青が咏に怪談BARに呼ばれるところから物語は始まります。霊感が強いゆえに人間関係に悩まされてきた青、怪談師を目指しているものの話す怪談はあまり怖くない咏。霊感の強い青に怪談師として修行中の咏は協力を依頼する…序盤から百合の香りがして全日本百合ラノベ協会南関東支部副部長の僕も大満足ですね。

そして始まる2人のオカルトでホラーな日常!怪談を求めて2人は神社に行ったり、とある配信者の身におきた心霊事件に迫ったり…怪談のシーンは描写としてはそれなりに怖いのですが、咏の明るさがそれをカバーしていていい塩梅でしたね!

そして青と咏の関係性ですよ…霊感が強いことを生かしてホラーなイベントの中でも上手に立ち回る青と、そんな青を明るくサポートしたりホラーなイベントを自ら引き寄せていく咏。2人のホラーな出来事の中で構築されていく関係性が素晴らしいの一言。ホラーと百合の相性の科学的証明がここにありました。

終盤では青の辛い過去が明かされたり、咏の妹に関する情報が開示されたりと一気に盛り上がりましたね!ここにきて改めてイラストを見返すと構図の素晴らしさにびっくりしますね…いや全イラストの構図こそこの作品1番のホラーかもしれないです…ラストもこの作品らしくてグッド!最後まで楽しく読ませていただきました!面白かったです!

キャラ A
青は霊感の強い女子高生。心霊現象に対しては冷静でしっかり対応できて頼り甲斐がある一方で、咏との関係性には《百合》を圧倒的に感じさせてくれる主人公で非常に良きですね…全日本百合ラノベ協会南関東支部副部長の僕太鼓判です…!

咏は怪談師を目指す女子高生!しかし怪談が全然怖くないうえに、父親が有名な怪談師ということでプレッシャーもあるという…なかなか難しい立場の少女ですが、青と出会いホラーイベントを経験していくうちにたくましさを感じるようになっていきましたね!そのほかのキャラも魅力的でした!

最後に
百合とホラーの組み合わせを存分に楽しめる作品でした!すでに2巻の発売も決まっていますし今後が楽しみな作品です!続刊待ってます!

どんな人にオススメか?
百合が好きな方は!ホラーはそれなりに怖いとは思いますが、登場人物たちは明るいのでそこまで怖さはないかな?と思います。なかなか珍しい要素の組み合わせが楽しめる作品です!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

私の怪談師はポンコツ可愛い 1 怪談収集はデートに含まれますか?



著者

石川扇



レーベル

HJ文庫


ISBN

978-4-7986-3861-4

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さて、今回感想を書いていくのは和田正雪さんの

「嘘つきは同じ顔をしている」

です!
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☆感想☆

オカルトを専門に扱う弱小出版社の編集者である山城は社長の命令で事故物件のマンションに住むことになる。優秀なアルバイトである小野寺はるかと共にマンションで起こる怪奇現象を調査することになる。同じマンションの住人である武藤家では小学校3年生の息子が行方不明に、霊能者として一躍注目を集めた葛木竜泉、そしてYouTuberの冴木早菜はマンションを仕事場に怪奇現象を動画のネタにしようとするが…心霊マンションを舞台にしたオカルトが今始まる!

和田正雪さんの新作!前作「夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない」がすごく面白かったので新作楽しみにしてました!今作は心霊マンションを舞台にした群像劇として楽しく読ませていただきました!面白かったです!

物語は4つの視点で進んでいきます。弱小のオカルト出版社に勤める若手編集者の山城、小3の息子が行方不明になった武藤大樹、元ホストで役者現霊能者の竜泉、そしてオカルトなどを扱い過激な動画や配信で人気を集めるサーナこと冴木早菜…人の視点を交互に入れ替えながらお話は進んでいきます。

最初は不気味な心霊マンションにたまたまあつまった4人のお話という印象でしたが、ページをめくるごとに心霊マンションにまつわる謎が明らかになっていきます。マンション周辺に伝わる伝承、早菜が追う心霊現象、帰らない息子に疲弊していく大樹、そして竜泉が明らかにする心霊の正体…ずっと誰かにみられているような、そんな不気味さを感じながら物語を読み進めることができます。

個人的に好きだったのは竜泉の視点。売れない舞台役者兼ホストだった竜泉が、霊能者役として見出されテレビの人気者になっていく過程は読んでいて面白かったです!

一見繋がらない4人の物語が終盤で一気に繋がっていくのは圧巻でしたね。心霊の正体もホラーかつとても興味深いものでした。また続きものというわけではありませんが、前作を読んでいる方ならさらに楽しめる描写もあり最後まで大満足でした。

オカルトを扱った群像劇として最後まで楽しく読ませていただきました!この作品を読んだ方はぜひ前作も合わせて読んでいただきたいですね!もちろんこの作品だけでも楽しめます!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

嘘つきは同じ顔をしている



著者

和田正雪



レーベル

角川書店


ISBN

978-4-04-115808-1

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どうも夏鎖です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています

さて、今回感想を書いていくのは甲田学人さんの

「ほうかごがかり」

です!
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☆感想☆

ストーリー A
内容は、小学六年生の二森啓は突如ほうがごがかりという謎の係に選ばれる。そしてその日の慎也零時に突然学校のチャイムと共に異次元の学校に飛ばされてしまう。そこは《ほうかご》と呼ばれる空間でまだ名前のない学校の怪談《無名不思議》が跋扈する場所だった。啓を含めた6人の小学生は無名不思議を記録する存在として彼らと対峙することになるが…とこんな感じです!

〜学校の怪談〜

甲田学人さんの新作!電撃文庫で発売された「霊感少女は箱の中」がめちゃくちゃ好きだったので新作楽しみにしてました!今作も甲田学人さんの作品でしか味わえないホラー?メルヘン?を存分に堪能させていただきました!面白かったです!
まず序盤。啓がほうかごがかりに選ばれるところから物語は始まります。導入は本当に完璧でしたね…ほうかごという場所の異質さや奇妙さはもちろん啓というキャラクター、そして惺というかつての親友との再会、そしてほうかごで無名不思議を記録するという目的の提示…なんとなく怖くて気味が悪いけど読み進めてしまう。そんなパワーのある導入でしたね。そして啓はほうかごがかりとして無名不思議であるまっかっかさんを記録することに。日常まで侵食してくる彼らに絵という特技で対抗していく過程がめちゃくちゃよかったですね!母子家庭である啓の境遇にも触れながらただの怪異解決譚ではない、人間味溢れる物語が展開されていくのもグッドです!あとはやっぱり無名不思議の存在感ですよね…パッと見害がなさそうに見える彼らですが知っていくにつれて…こういうじわじわくるタイプのホラー大好きです。中盤以降は見城真絢という少女視点の物語になるのですがこれがまたいい…そして終わり方がものすごくいい…甲田学人さんの物語でしか味わえない極上のメルヘンを最後まで楽しませていただきました!面白かったです!

キャラ A
啓は絵が得意な小学生!最初は内向的な子かと思っていましたが、まっかっかさんに対抗していく度胸であったりは見ていてハラハラしましたね。惺はかつての啓の親友!かつて、といっても啓と距離をとった理由がほうかごが原因なら仕方ないですよね…リーダーシップ溢れる少年で頼り甲斐がありました!真絢は本当はいい子なんでしょうけどね…はい…

最後に
久しぶりに甲田学人さんの作品読めて大満足!じわじわくるホラー?メルヘン?を堪能できました!2巻は2月発売ということで今からめちゃくちゃ楽しみです!啓たちがほうかごをどう乗り越えていくのか楽しみです!続刊待ってます!

どんな人にオススメか?
ホラー好きな方は!グロいや怖いというよりは生理的に嫌な感じが続く感じなのである程度好き嫌いは分かれるかと思います。一方で読みやすい文章と引き込まれるほうかごを舞台にした物語はハマる人にはハマるはず!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル

ほうかごがかり



著者

甲田学人



レーベル

電撃文庫


ISBN

978-4-04-915199-2

表紙画像のリンク先


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