カテゴリ: 青春ミステリ

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは古宮九時さんの「彼女は僕の「顔」を知らない。」です!
⚠︎致命的なネタバレはないですがミステリ作品の感想のため未読の方は注意してください
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夏休みのフリースクールで起きたキャンプ場放火事件。複数の死者を出したその事件から10年。生存者である新塚良の前に現れたのは同じく生存者である静葉だった。放火事件の当日に怪しい黒い男に遭遇したという彼女の証言から、放火事件の真実を追い求めることになるが彼女は人の顔が認識できない失貌症を患っていた。差出人不明の脅迫状が届く中、果たして良と静葉は真実にたどり着くことができるのか…

古宮九時さんの新作。最近では電撃の新文芸からファンタジー作品を出版されていますね。もちろんそちらの作品も大好きなのですが「死に見る僕と、明日死ぬ君の事件簿」「純真を歌え、トラヴィアータ」といった古宮さんがこれまでMW文庫で発表されてきた作品も大好きなのでMW文庫の新作が読めて嬉しいです。10年前の放火事件の謎を追うというミステリとしての軸はしっかりしていながらも、青春ものとしても楽しめる作品でした。面白かったです。

少し問題を抱える生徒たちが集まる夏休みのフリースクール。そこの会場で起きたキャンプ場放火事件。数人の死者を出した凄惨な放火事件の生き残りである良。彼は人の負の感情を強く感じてしまう体質に悩まされながら生きています。彼の生きづらさは序盤から痛いほどに伝わってきますね。そんなある日、転校生として放火事件の生き残りの1人である静葉がやってきます。

静葉は失貌症という人の顔を認知できない病を患っています。そんな彼女は良が放火事件の生存者だと気づきませんが、ひょんなことをきっかけに良のことを生存者だと知ります。このシーンは運命的なものを感じられる場面でとても印象に残っています。そして静葉の証言を元に10年前の放火事件の真実を追い求めることになります。

事件に関する証拠を集めながら紡がれる良と静葉の青春模様もとてもよかったです。良と静葉が一緒に市内を巡るシーンがあるのですが、良が失貌症を患う静葉に気を遣って変な格好できたり、静葉のことを心配したり優しく気遣ってあげたり…甘酸っぱさとはまたちょっと違った不器用なだけど優しい青春を感じられました。

中盤から終盤にかけて放火事件の核に良と静葉は迫っていきます。事件の謎に関しては読むとストンと落ちる納得感がありましたね。そしてラストではここまでためてきていた青春の甘酸っぱさが花ひらく場面もありで大満足でした。

260pちょっととサクッと読める物語でありながらもミステリとしても青春ものとしても読み応え抜群の作品でした。気になった方はぜひご一読を

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



彼女は僕の「顔」を知らない。



著者



古宮九時



レーベル



メディアワークス文庫



ISBN



978-4-04-912484-2


表紙の画像は「版元ドットコム」様より



どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています
さて、今回紹介するのは辻室翔さんの「ナゾトキ女とモノカキ男。 未来を写すカメラと人体消失」です!
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ストーリー A
内容は、あらゆる分野でプロ級の腕前を発揮しながらもそれをただの趣味だという<史上最強のアマチュア>未十士早來。彼女が趣味だというものの中には謎解きも含まれていた。小説家を夢見る唯乃壱時はそんな早來に付き合わされて一緒に事件を解決していた。天才と凡人。一見釣り合わない2人だが、超理具という不思議な力を宿す道具を所持していた。早來は特定の未来を写すカメラ。壱時は3分だけ時間を巻き戻すカメラ。2人はこの道具を使って学園で起こる謎を追っていくが…とこんな感じです!

〜史上最強のアマチュアが謎を解決!〜
辻室翔さんの新作!前作「札幌市白石区みなすけ荘の事件簿 ココロアラウンド」が好きだったので新作楽しみにしていました!魅力的なキャラによる学園ミステリと超理具という異能を組み合わせた読んでいて楽しい作品でした!面白かったです!
ありとあらゆる道を極めて史上最強のアマチュアと呼ばれる女子高生・未十士早來。彼女は所有する超理具運命カメラという特定の未来を撮ることができるカメを使って謎を見つけ、それを壱時が一緒に解決する…というのがストーリーの軸になっています。物語は学園祭の準備期間から始まりますが、序盤から早來がフルスロットルで活躍してましたね…リンゴがつぶせる系女子高生なくせに手芸とかのインドア系も一通りできちゃうの本当に才能の塊ですね…学園祭の準備でここまで輝く女子高生は現実にもフィクションにもいないのでは?序盤では学園を騒がせる「人体消失事件」の謎を追っていく2人。超理具というものが出てくるのでどんなトンデモミステリかと思いきや、ミステリ部分はしっかりロジカルでトリックもしっかりしていてミステリ好きとしては大満足!こういう学園ミステリ待ってました!お話が進むにつれて超理具のお話も目立ってきますが、やっぱりミステリ軸はブレない。それどころか超理具もただ謎解きに使うのではなくて、しっかりとミステリに絡めてくるのが個人的にすごくグッド!終盤では驚きの展開やえっと思うような展開、少年漫画らしい熱い展開、ラブコメ展開もあって物語をさらに盛り上げていましたね!最後まで楽しく読ませていただきました!面白かったです!

キャラ A
早來ちゃんめっちゃ可愛かったです!インドアもアウトドアもなんでもできちゃうちょっと小さめパワフルガール!しかも美少女!それを自慢しちゃう!最強無欠の存在かと思いきや要所で女の子らしいところも見せてくれる…最後のアレは反則ですね…超かわいい女の子でした!壱時はなんだかんだいいつつも早來と一緒に謎解きをするいい奴。口はちょっと悪いですけど、本当に夢にまっすぐで早來や事件と真っ直ぐ向き合っていて好感度高いです!

最後に
めっちゃ面白かったので2巻も期待してます!まだまだ面白くなりますよ!この作品は!早來と壱時コンビの謎解きも楽しいですし、ミステリ部分もグッド!続刊待ってます!

どんな人にオススメか?
学園ミステリが好きな方は!超理具といういわゆる超能力的なものが出てくるので、ガチガチな学園ミステリを期待して読むとちょっと違うかな?という方もいるかもですがこの超理具をミステリに絡めてしっかり調理していて読み応え抜群です!気になった方は!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



ナゾトキ女とモノカキ男。 未来を写すカメラと人体消失



著者



辻室翔



レーベル



富士見ファンタジア文庫



ISBN



978-4-04-073886-4


表紙の画像は「版元ドットコム」様より



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さて、今回紹介するのは川澄浩平さんの「探偵は友人ではない」です!
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前巻の記事↓
前作「探偵は教室にいない」に続くシリーズ第2弾。このシリーズはシリーズ名的なものはないんですかね?それはさておき、約1年ぶりの真史と歩のコンビによる謎解きはとてもワクワクとさせてもらいました。面白かったです!ミステリということもあるので、簡単に各話の感想を。


ロール・プレイ
歩がかつての友人と再び仲良くなるお話。このお話であぁ歩もちゃんと中学生の男の子みたいに悩んだりするんだなと思いました。かつて塾が一緒だった鹿取という男子と一緒に体験した遠い日の、ほろ苦い思い出。水野先生は多分大学生らしくすごく焦っていたのもあるんじゃないんですかね…この事件については…と当時の歩もやっぱり歩なんだということに激しく納得しながら、鹿取と水野先生は学校で再会して何を話したんだろうなと思いに馳せるのも楽しいお話でした。

正解には程遠い
謎解きとしては、やはり暗号解読?ということもあって僕でも楽しく解けるものでしたね。そしてこのお話から本格参戦してくる彩香ちゃんがすごいうパワータイプでグイグイきますねw 彩香ちゃんの実家の洋菓子店の謎解き企画に協力することになった真史。そしてそれを手伝う甘いものに目がない歩。このお話が2人の距離感としてはすごく安心できるというか、2人らしいなと思いました。図もきちんとあって作中の2人と一緒に謎解きできたのも楽しかったです!

作者不詳
ミステリ的な部分はもちろん人間的な部分でもやられたなと感じた作品。美術室と美術準備室を舞台に繰り広げられる日常の謎。歩の謎解きもありますが、真相に近づくのは真史の方で、学校の先生とのやりとりやエナちゃんとの会話とか、真史が見るような普通の青春じゃなくて、そうじゃないものも学校には存在するんだよと訴えかけてくるような謎でしたね。


for you
これが1番好きでしたね!喫茶店での謎から物語が始まってこれが本題かと思いきや青春をガツンとぶつけてくる。歩くんのことはこのお話でますます好きになっちゃいましたねw そっか頭のいい彼でもこんなことに悩んでわざわざそのためにこんな行動するんだなって。そんな歩に対する真史の行動もいいですし、最後の1ページはとても彼ららしいなと思いました。

2巻もとても面白かったので3巻も楽しみにしています。


それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報

タイトル



探偵は友人ではない



著者



川澄浩平



レーベル



東京創元社



ISBN



978-4-488-02817-6


表紙の画像は「版元ドットコム」様より




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さて、今回紹介するのは三田千恵さんの「天才少女Aと告白するノベルゲーム」です!
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ストーリー A
内容は、大好きなフリーゲーム製作者Aに会うため上京し東京の高校へと進学した水谷湊。桜山学園ゲーム制作部に所属しているというAという人物は…不登校になっている菖蒲だと判明する。湊は菖蒲の幼馴染みだという変わり者の由井と共に学校に来るように説得するが、失敗に終わってしまう。そんな湊の元に一つのノベルゲームが届けられる。バッドエンドを探せと名付けられたそのゲームはゲーム制作部の過去が綴られており…このゲームは一体何を意味しているのか。ゲーム制作部の5人が関わる謎が解き明かされる!…とこんな感じです!

〜本当にゲームを作ったのは誰?〜
三田千恵さんの新作!ファミ通文庫からは「彼女のL」以来ですね!今回も青春とミステリの融合が素晴らしい作品でした!面白かったです!
フリーゲーム「鬼ヶ島」にハマり、制作者の1人Aとメールでやりとりするようになっていた湊。彼はAに会うために田舎から出て東京の高校に進学し、ゲーム制作部へと入部します。序盤はゲーム制作部のメンバーや湊のことを紹介しながら後半のミステリ展開につながる下地を丁寧に描いていましたね。特に湊の母親との確執はリアリティがあり、メイン軸であるゲーム制作部に関する問題のサブの軸として物語に厚みを持たせていました!そして湊はこれまでメールでやりとりをしていた菖蒲に会うために由井と共に彼女の自宅へ向かいますが、あっけなく追い返されてしまいます。Aに会えずに落ち込む湊に制作者不明のゲーム制作部の過去を描いたノベルゲームが届きます。ゲーム制作部が今のような状態にならなかったifが描かれる作品により徐々に不協和音が走りはじめて…ここからが一気にミステリが加速していきます。かつて鬼ヶ島をプレイしたことでもう二度と会えなくなってしまった小野という少女、引きこもる菖蒲、どんな状況でも天真爛漫な由井、湊の過去と再び姿を表した母親…一見繋がっていないように見えた要素が物語が進むに連れてしっかりと噛み合い謎が解かれいく過程は思わず夢中になってしまいました!ミステリだけではなく、青春の酸いも苦いも、そしてラストのほんのりとした甘さも最高の作品でした!終盤に向かうにつれて加速するいい青春ミステリでした!面白かったです!

キャラ A
湊は田舎育ちの純粋な男の子。母親との確執や、過去の辛い経験も…それらをゲームが救ってくれたから今がある。常に前向きでなんでもできる優しい男の子でした!由井は天真爛漫な女の子!甘いものが好きで、次にどんな行動をするのかわからないようなエキセントリックさがありましたが笑顔が可愛い思わず抱きしめたくなるような女の子でした!菖蒲は序盤の印象こそちょっと不思議な?近寄りがたい?女の子でしたが、湊と交流していくうちに女の子らしいかわいさをたくさん見せてくれました!その他にも同じゲーム制作部の男子・二ノ宮、元気いっぱいガールの百瀬も魅力的でした!

最後に
青春とミステリが楽しめるいい作品でした!三田千恵さんのいいところが存分に発揮されていた作品だと思います!この作品は1巻で完結だと思いますが、また三田千恵さんの作品を読みたいです!

どんな人にオススメか?
青春ミステリが好きな方は!青春もののビターで爽やかなところと、ミステリの点と点が繋がって線になっていく面白さが同時に楽しめる作品です!気になった方はせひ!

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

書籍情報


タイトル



天才少女Aと告白するノベルゲーム



著者



三田千恵



レーベル



ファミ通文庫



ISBN



978-4-04-735893-5


表紙の画像は「版元ドットコム」様より

どうも夏鎖芽羽です(≧∇≦)
この感想はブログ「本達は荒野に眠る」のものです。無断転載は禁止しています。

さて、今回紹介するのは米澤穂信さんの「いまさら翼と言われても」です!
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このブログを読んでいる人にとってはおそらくアニメ「氷菓」の原作シリーズとして有名な古典部シリーズの最新刊。「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠まわりする雛」「ふたりの距離の概算」に続くシリーズ第6弾になります。ちなみに今作は短編集となっていて、必ずしも「ふたりの距離の概算」の時系列的な続きにはなっていません。

このブログでは米澤穂信さんの作品を取り上げるのは初めてですが、中学〜高校生の頃に特に好きだったのが米澤穂信さんの作品で高校三年生あたりまでは米澤穂信さんの作品は全て読んでいました。中でも古典部シリーズは最初に読んだ米澤穂信さんの作品であり、初めて最初から最後まで追った深夜アニメということもあり色々思い出が詰まっています。

以下では今作に収録されている六つの短編の簡単な紹介をしていきます。トリックに関する致命的なネタバレはしませんが、ミステリなので未読の方はご注意を。

箱の中の欠落
折木と里志が選挙の不正に挑む短編。焼きそばを食べ、ラーメンを食べと「あれ?折木って麺好き?」と思ってしまいましたね。選挙といえば学園ものの醍醐味の一つですが、折木らしい安楽椅子探偵な謎解きでしたね。犯人というより犯行手段を暴くというのが実に折木らしく、また古典部シリーズらしいと感じました。

鏡には映らない
摩耶花が中学時代に折木が起こした事件?に迫るというもの。後述しますが、今回で折木の過去が小中と明らかになってしまいましたね。卒業制作で折木らしくない息抜きをした理由が気になり調べることに…摩耶花の行動力でサクサクと明かされる謎は気持ちがいいですね。そして折木はヒーローでした。

連峰は晴れているか
こちらはアニメにもなった短編で、記憶が間違っていなければ時系列的にも今作では作中の時系列も初出も1番古い作品。中学時代の教師があるときだね、ヘリコプターに反応したのはなぜか?という謎に折木が迫ります。サクっと解決してえるを納得させる折木はさすがの一言です。

わたしたちの伝説の一冊
摩耶花が主人公の漫研を巡る物語。ミステリ軸というよりも青春軸でしょうか?個人的にはこのお話が1番好きです。文化祭以降(「クドリャフカの順番」)ギスギスを越した対立が生まれた漫研。そこで起こるべくして起こり、そして摩耶花が巻き込まれることになった事件が描かれます。個人的には今作ではこのお話が1番好きでした。摩耶花という女の子が何を思って漫画を描いて、何に向き合ってきたのかがわかる短編でした。

長い休日
折木のモットーの由来である小学校時代のエピソードが明かされるお話。たまたま気分がいい折木が意気揚々と出かけるとえるに出会い…小学校時代のエピソードを折木が語り、なぜあんなモットーで生きるようになったのか。青春の屈託がここにぎゅっと濃縮されていました。

いまさら翼といわれても
表題作。合唱祭に参加するはずのえるを探してほしいと折木が摩耶花に頼まれるところから始まるストーリー。こちらもミステリ要素は少なめですが、青春ものとして、そして古典部シリーズとしてはかなり重要なお話でしたね。なぜえるが合唱祭に来ないのか。その理由を折木は…ラストの余韻もすごく良かったです。

以上になります。20代になって初めて読んだ古典部シリーズでしたが、相変わらずとても面白くて安心しました。次はぜひ長編で折木たちの活躍を見てみたいです。

それではこの辺で(≧(エ)≦。)

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